蝶々夫人は、日本の長崎を舞台にしたオペラです。蝶々夫人には「さくらさくら」「越後獅子」「お江戸日本橋」などの日本の伝統音楽や民謡の旋律が使用されています。当時のイタリア駐在公使夫人の助言で、プッチーニは日本文化や風習をオペラに取り入れることができました。蝶々夫人の見どころは「愛の二重唱」Bimba dagli occhi pieni di malìa「ある晴れた日に」Un bel dì, vedremo「ハミング・コーラス」Coro a bocca chiusa です。
蝶々夫人、オペラ:人物相関図
蝶々夫人、オペラ:登場人物
蝶々さん, Madama Butterfly | 芸者 | ソプラノ |
ピンカートン, B.F. Pinkerton | アメリカ海軍士官 | テノール |
シャープレス, Sharpless | アメリカ領事 | バリトン |
スズキ, Suzuki | 蝶々さんの女中 | メゾソプラノ |
ゴロー, Goro | 結婚仲介人 | テノール |
ボンゾ, Lo zio Bonzo | 蝶々さんの伯父 | バス |
ケート, Kate Pinkerton | ピンカートンの妻 | メゾソプラノ |
ヤマドリ, Il Principe Yamadori | テノール |
- 原題:Madama Butterfly
- 言語:イタリア語
- 作曲:ジャコモ・プッチーニ
- 台本:ルイージ・イッリカ ジュゼッペ・ジャコーザ
- 原作:ジョン・ルーサー・ロングの小説 デイヴィッド・ベラスコの戯曲「蝶々夫人」
- 初演:1904年2月17日、スカラ座、ミラノ
- 上演時間:2時間20分(第1幕50分 第2幕50分 第3幕40分)
蝶々夫人、オペラ:簡単なあらすじ
ピンカートンは蝶々さんとの結婚をお金で購入する。彼にとっては遊びの結婚だが、彼女にとっては真剣な結婚である。
愛らしい少女よ、君はもう僕のものだ。君は百合の花のような服を着ている。君は美しい。
ピンカートンが日本を去って3年が過ぎた。
必ず彼は戻ってくる。彼はコマドリが雛を産む頃にバラの花を持って戻ってくると言った。
ピンカートンはアメリカで結婚し、日本に戻ってきた。彼は蝶々さんに会うつもりはなかった。だが、彼女が彼の子供を産んでいたため、彼は彼女に会うことを決める。彼は妻やシャープレスと一緒に彼女の家を訪ねるが、自分の過去の軽率な行動の結果を知り、彼女に会わずに帰ってしまう。蝶々さんは自宅の庭で外国人女性を見つける。彼女は残酷な現実を理解する。
かわいい男の子。あなたは百合とバラの子です。私はあなたのために死ぬことを選びます。
蝶々夫人、オペラ:第1幕のあらすじ
入り江を見下ろす丘の上の家
ゴローがピンカートンに家を案内している。
夫婦の部屋としてどこを使えばいいの?
結婚仲介人(ゴロー)
この部屋やあの部屋を自由に使ってください。
シャープレスが現れる。
見晴らしは良いけれど、急な坂道だね。この家は、君のものなのか?
この家を買いました。それは日本式の契約で、毎月更新できて、僕が望むときに解約できます。
僕たちヤンキーは、世界中どこでも好きな場所に行き、美女たちと恋を楽しむ。今回の結婚は、日本式の結婚だ。僕が望むときに破棄できる条件の気楽な結婚だ。
「世界中どこでも」Dovunque al mondo
それは軽率な考えだ。君の花嫁は美しいのかね?
結婚仲介人(ゴロー)
彼女はとても美しい花嫁です。それにとても安いです。私はあなたにも花嫁を用意できますよ。
いや、私は結構だ。君はこの結婚を真剣に考えているのか?
わかりません。彼女の容姿や振る舞いは美しく、蝶のように可憐です。僕は彼女を捕まえたくなります。
彼女を悲しませるのは残酷だよ。遠く離れた君の家族のために乾杯しよう。
いつか僕がアメリカ人の花嫁と本当の結婚をする日に向けて。乾杯!
蝶々さんが友人たちとともに現れる。
蝶々さんの友人
ああ、美しい空、美しい海!
「美しい大空・女性合唱」Ah! Quanto cielo!
私は日本で、世界で一番幸せな女の子です。私は愛の呼びかけに応じるためにやってきました。
彼女はピンカートンにお辞儀する。
ずいぶん変わった挨拶だ。
あなたに家族はいますか?
私は武家の娘です。家が没落したために芸者になりました。私の家族は母だけです。父は亡くなりました。
(シャープレスに小声で)彼女の人形のような振る舞いが、僕を興奮させるんだ。
あなたは何歳ですか?
私は15歳です。十分な年ごろです。
無邪気に遊ぶ年齢だ。
彼女の親族や役人が現れる。彼らはピンカートンに挨拶して、庭を出て行く。
おいで、愛しい人。
ちょっとごめんなさい。私の着物の袖の中に荷物が入っています。鏡や扇子です。この小箱は神聖なので、自分で持っていきます。
彼女は小箱を持って去る。
あの小箱はなんだろう?
結婚仲介人(ゴロー)
箱の中には、帝から彼女の父への贈り物が入っているそうです。
彼は腹を切るしぐさをして去る。彼女が戻る。
私は昨日、教会に行ってきました。新しい人生のために、新しい信仰を信じます。私の家族はそのことを知りません。私はあなたのために家族を忘れてもいいと思っています。
彼らは日本式の結婚式をする。シャープレスは帰る。宴会が始まる。
僕たちは今や家族です。乾杯しましょう。
ボンゾが現れる。
蝶々さんの親戚(ボンゾ)
なぜお前は教会に行ったのか?お前は信仰を捨てた!お前が我々を捨てたのだから、我々はお前と縁を切るしかない!
やめろ。出て行ってくれ。
ボンゾは人々を引き連れて去る。彼女は泣いている。
泣かないで。君が涙を流す必要はない。夕暮れが来る。
「夕暮れが訪れた」Viene la sera
家族に見捨てられても、あなたがいてくれるから幸せです。
彼女は花嫁衣裳から夜の服に着替える。
華やかな服装は着替えるのが大変なのです。
彼女は結び目を解いている。僕の花嫁。彼女は僕の情熱を呼び起こす。
彼らは夜空を見る。
愛らしい少女よ、君はもう僕のものだ。君は百合の花のような服を着ている。君は美しい。
「愛の二重唱」Bimba dagli occhi pieni di malìa
どうか私を愛してください。赤ちゃんのような小さな愛を与えてください。小さな愛が私にちょうどいいんです。
「愛の二重唱」Bimba dagli occhi pieni di malìa|蝶々夫人
蝶々夫人、オペラ:第2幕のあらすじ
蝶々さんの家
ピンカートンが日本を去って3年が過ぎた。
ピンカートンは戻ってくる。
女中(スズキ)
でも、外国人の夫が戻ってきたことはありません。
黙れ!あなたを殺すわよ。必ず彼は戻ってくる。彼はコマドリが雛を産む頃にバラの花を持って戻ってくると言った。さあ、あなたも言いましょう。彼は戻ってくる。
女中(スズキ)
彼は戻ってきます。
ある晴れた日に、彼は戻ってくる。私は隠れていましょう。彼に再会したときに喜びで死んでしまわないように。
「ある晴れた日に」Un bel dì, vedremo
「ある晴れた日に」Un bel dì, vedremo|蝶々夫人
シャープレスとゴローが来る。
マダム・バタフライ。
マダム・ピンカートンです。アメリカの家庭にようこそ。
ピンカートンから私宛の手紙が届きました。
なんて幸せなの!あなたに質問があります。彼は私にコマドリが巣を作る頃に戻ると約束しました。日本ではコマドリは巣を3度作ったのに、アメリカではまだなのですか?
ゴローが笑っている。彼女は彼を睨みつける。
私は知りません。でも、別のことで話したいことがあるのです。
聞いてください。ゴローは私に別の男との結婚を勧めるのです。
結婚仲介人(ゴロー)
私は彼女に金持ちの男を紹介しましたよ。彼女は親族から見放され、貧乏です。
ヤマドリが庭に来る。
あなたは私を諦めましたか?多くの奥様を持ったあなたですから、平気でしょう?
金持ち男(ヤマドリ)
今は独身です。
私には夫がいます。
結婚仲介人(ゴロー)
彼女は、自分はまだ彼と結婚していると信じているのです。
日本では離婚は簡単ですが、アメリカではそうではありません。私はアメリカの法律に従います。あら、お客様にお茶を用意しましょう。
彼女が席を外す。
結婚仲介人(ゴロー)
ピンカートンを乗せた船が到着したんですよね?
金持ち男(ヤマドリ)
彼女は彼に会うだろう。
彼は彼女との再会を望んでいません。
彼女がお茶を持って戻る。
なんて面倒な人たちなの。
ゴローとヤマドリは去る。
私たちだけになりました。彼の手紙を読みましょう。
「友よ、私の花のような女の子を探してくれ。もう3年も経ったから、彼女は私を覚えていないだろう。彼女がまだ私を愛していたら…」
もし彼が二度と戻ってこなければどうします?
「手紙の二重唱」Legger con me volete questa lettera
芸者に戻るか、死ぬかです。
あなたを偽りの幻想から引き離すのは可哀想ですが、金持ちの提案を受け入れてください。
私には彼の子供がいる!彼は自分の息子を知らないのです。
彼女が子供を連れてくる。
私はお前を抱いて町に出て、食べ物を求めるだろう。お前のために芸者になるだろう。いや、私はもう二度と不名誉な仕事はしない!それならば、死んだほうがいい。
「お前のお母さんはお前を抱いて」Che tua madre dovrà
私は彼に子供のことを話します。
シャープレスは去る。スズキがゴローを捕まえる。
結婚仲介人(ゴロー)
アメリカでは呪われて生まれた子どもは拒絶されると聞きました。
嘘つき!殺してやる!
彼女は短刀を振り回し、彼を蹴飛ばす。彼は逃げ出す。港から大砲の音が聞こえてくる。
みんなが嘘を言っていた。彼は帰ってくる。私の愛が勝った!彼は戻ってきて、私を愛してくれる。
桜の花を揺すってちょうだい。私は花の雨の中にいたい。部屋を花でいっぱいにしましょう。庭の花を全部摘み、部屋を飾りましょう。
「花の二重唱」Scuoti quella fronda
彼女たちは、部屋を花で飾りつける。
私は花嫁衣裳を着て、髪には赤い花を飾ります。
障子には3つの穴が開いており、蝶々さん、スズキ、子供はその覗き穴から庭を眺める。夜が更け、スズキと子供は眠りにつく。蝶々さんは立って待っている。
「ハミング・コーラス」Coro a bocca chiusa
蝶々夫人、オペラ:第3幕のあらすじ
蝶々さんの家
朝。蝶々さんは立って待っている。スズキが目覚める。
女中(スズキ)
休んでください。彼が来たら、あなたを呼びます。
蝶々さんは子供をつれて部屋に戻る。ノックをする音。シャープレスとピンカートンが現れる。
女中(スズキ)
ああ!
静かにしてください。
女中(スズキ)
彼女は一晩中あなたを待っていました。
なぜ彼女は僕が戻ったとわかったの?
女中(スズキ)
なぜなら彼女は、3年間欠かさず港を行き交う船を見続けているからです。私は彼女を呼びます。
いや、待って。
女中(スズキ)
こちらを見て下さい。彼女はあなたを迎えるために部屋を花で飾りました。
スズキが庭から少し離れた場所にいる外国人の女性を見る。
女中(スズキ)
あの女性は誰ですか?
彼女は僕と一緒に来た。
彼女は彼の妻だ。私たちは君に会うために早朝に来ました。私たちは君の助けを必要です。蝶々さんの苦悩に慰めはない。だが、彼の子の将来は保証しなければいけません。まずは君が彼の妻と話してくれませんか?
女中(スズキ)
あなたはひどい頼みを私にしています。
スズキはピンカートンの妻に会いに行く。
部屋は当時のままです。僕の肖像画がある!もう、ここにはいられない。さようなら、喜びと愛の花が咲く我が家よ。僕は彼女の悲しみを見ることはできない!
「さようなら、愛の家よ」Addio fiorito asil
「さようなら、愛の家よ」Addio fiorito asil|蝶々夫人
彼は走り去る。
ピンカートンの妻(ケート)
彼女に伝えてくれますか?私は彼女の子を大切に育てます。
蝶々さんが部屋から出てくる。
女中(スズキ)
あなたはこちらに来てはいけません。
彼がここにいるの?
彼女はアメリカ人女性を見る。
彼女は誰?
スズキは泣いている。シャープレスが説明しようとする。
(シャープレスに)あなたは何も言わないでください。私はその瞬間に死んでしまうかもしれない。
(スズキに)あなたはいい人です。はい、いいえで答えて。彼は生きているの?
女中(スズキ)
はい。
彼は昨日到着したが、ここに来なかった。
彼女を許してください。
ああ、彼女は彼の妻だ。全てが終わった!
ピンカートンの奥さん(ケート)
あなたの子を私たちに譲ってくれますか?
私は彼に私の子を渡します。しばらくしたら、彼にここに来るように伝えてください。
シャープレスとピンカートンの妻は去る。
光や春がつらい。窓を閉めてちょうだい。
女中(スズキ)
おそばにいます。
あなたは私の子供と一緒に遊んであげて。
蝶々さんはスズキを部屋の外に出す。彼女は小箱から短刀を取り出す。スズキが子供を部屋に入れる。
かわいい男の子。あなたは百合と薔薇の子です。私はあなたのために死ぬことを選びます。あなたが大人になったとき、母に捨てられた苦しみを味わうことがないように、私は死にます。
「かわいい坊や」Tu? tu? piccolo Iddio!
「かわいい坊や」Tu? tu? piccolo Iddio!|蝶々夫人
百合の蝶々さんとバラのピンカートンの間に生まれた子。
彼女は子供に目隠しをする。彼女は自分を刺す。部屋の外からピンカートンの声。
蝶々さん、蝶々さん。
ピンカートンとシャープレスが部屋に入ってくる。彼女が子供を指さし、亡くなる。