リゴレット 第1幕
マントヴァ公爵の屋敷で開かれた、舞踏会。着飾って現れた貴婦人たちを見て、恋の自由を歌うのがマントヴァ公爵の「あれかこれか」です。
「あれかこれか」Questa o quella【歌詞と対訳】
Questa o quella per me pari sono
A quant’altre d’intorno mi vedo;
Del mio core l’impero non cedo
Meglio ad una che ad altra beltà.
La costoro avvenenza è qual dono
Di che il fato ne infiora la vita;
S’oggi questa mi torna gradita
Forse un’altra doman lo sarà.
あの人もこの人も、私には同じだ、
私の身近にいる女と。
私は心の支配を渡さない、
別の美しさがあろうともひとりには。
女たちの魅力は、賜り物だ
運命が人生に花開かせてくれる(贈り物だ)
今日、この女に心を喜ばそうとも、
明日は別の女になるだろう。
La costanza, tiranna del core,
Detestiamo qual morbo crudele.
Sol chi vuole si serbi fedele;
Non v’è amor se non v’è libertà.
De’ mariti il geloso furore,
Degli amanti le smanie derido;
Anco d’Argo i cent’occhi disfido
Se mi punge una qualche beltà.
変わらぬ心、心を縛るのだ
私は残酷な病として嫌悪する。
忠実でありたい者だけがそうすればいい、
自由がなければ愛はないのだ。
夫の嫉妬深い怒り、
恋人の情熱をあざ笑うよ。
アルゴスの百眼に挑戦しよう、
美しさが私を捕らえるなら。
【解説】「女心の歌」と変わらない、マントヴァ公爵の恋愛観
歌詞の中に出てくる、アルゴス。ギリシャ神話の中に出てくる、百の目を持つ巨人のことです。ギリシャ神話の内容は、こんな感じ。
アルゴス(巨人)は、ヘラ(ゼウスの妻)からイーオー(ゼウスの愛人)の見張りを頼まれる。ゼウスの命令で、ヘルメスがイーオーを取り返す。アルゴスは、ヘルメスとの戦いで死んだ。もしくは、イーオーを奪われた罰として、ヘラに殺された。
「美女がいるならば、怪物にだって挑戦してやる!」というマントヴァ公爵の心意気みたいなものです。
第3幕で歌われる「女心の歌」と同じく、恋愛の自由を歌っています。第1幕から第3幕までマントヴァ公爵は恋愛観に変化がなかったということですね。