グルックのオペラ「オルフェオとエウリディーチェ」は、神聖ローマ帝国の皇帝フランツ一世(マリア・テレジアの夫)の霊名日(洗礼名の聖人の記念日)のために書かれた作品です。オルフェオとエウリディーチェの見どころは「精霊の踊り」 Reigen Der Seligen Geister、「エウリディーチェを失って」Che faro senza Euridice?になります。モンテヴェルディのオペラ「オルフェオ」と同じギリシャ神話を題材としています。
オルフェオとエウリディーチェ、オペラ:人物相関図
オルフェオとエウリディーチェ、オペラ:登場人物
オルフェオ | 吟遊詩人 | カストラート・アルト |
エウリディーチェ | オルフェオの妻 | ソプラノ |
アモール | 愛の神 | ソプラノ |
- 原題:Orfeo ed Euridice
- 言語:イタリア語
- 作曲:クリストフ・ヴィリバルト・グルック
- 台本:ラニエーリ・デ・カルツァビージ
- 原作:ギリシャ神話
- 初演:1762年10月5日 ウィーン ブルク劇場
- 上演時間:1時間35分
オルフェオとエウリディーチェ、オペラ:簡単なあらすじ
オルフェオとエウリディーチェは新婚である。エウリディーチェは死んでしまう。オルフェオが悲しんでいると、愛の神が「エウリディーチェを救うために冥界に行ってもよい。ただし、そこを出るまで彼女を見てはならない」と告げた。
オルフェオは彼女を救いに行くが、彼女を見てしまう。エウリディーチェは再び死んでしまう。オルフェオが命を絶とうとすると、愛の神が現れる。彼女はエウリディーチェを生き返らせる。二人は一緒に戻り、人々は愛の神を讃える。
オルフェオとエウリディーチェ、オペラ:第1幕のあらすじ
第1場
ギリシャの野原、エウリディーチェの墓の前。嘆くオルフェオを囲むように、ニンフと羊飼いたちが花を手に集まっている。
ニンフと羊飼いたち
エウリディーチェ、美しい霊よ。もしここをさまよっているなら、彼の嘆きを聞いて。
エウリディーチェ!
ニンフと羊飼いたち
不幸な花婿が泣きながら、あなたを求めている。
友よ、やめてくれ。君たちの嘆きが私の嘆きを酷くする。墓に花を飾って去ってくれ。悲しみと不幸の中で、一人でいたいのだ。
ニンフと羊飼いたち
エウリディーチェ、美しい霊よ。もしここをさまよっているなら、彼の嘆きを聞いて。不幸な花婿が泣きながら、あなたを求めている。
ニンフと羊飼いたちが去っていく。
愛する人をこれほど呼んでも無駄なのだ。彼女は答えてくれない。
エウリディーチェ、どこにいるのか。神々や人々に尋ねるが、答えはない。私の嘆きに答えるのは、こだまだけ。
エウリディーチェ!この名をあらゆる自然が知っている。私が森や砂浜に尋ね歩いたからだ。
神々よ、彼女を返してくれ。私は恐ろしい洞穴に入り、花嫁を探しに行く勇気があるぞ。
第2場
オルフェオのもとに、愛の神。
愛の神がお前を助けよう。お前の嘆きに、ゼウスの神が同情したのだ。三途の川を生きたまま渡る許可が出た。
もしお前の歌が、冥界の神や霊を鎮めさせることができるなら、エウリディーチェをこの世に連れ戻すことができるだろう。
いつ?どうやって?私には覚悟があります。
条件がある。冥界から出る前に、エウリディーチェを見てはならない。見ない理由を彼女に教えてはいけない。
彼女を見たくてもこらえろ、何も言うな。我慢は一時だ。
私は何を聞いたのか?本当だろうか。
冥界では、エウリディーチェを見てはいけない。抱いてもいけない。彼女はどう思うだろう?怒るかもしれない。だが、私は決めたのだ。このまま会えないよりはいい。
神よ、私は約束します。
落雷が鳴り、オルフェオは立ち去る。
オルフェオとエウリディーチェ、オペラ:第2幕のあらすじ
第1場
冥界の入り口。薄暗い、三途の川付近。
復讐の女神と亡霊たち
一体誰が冥界の濃い霧の中をやってくるのか。復讐の女神が男に恐怖を見せてやろう。地獄の番犬の唸り声を聞かせるのだ。
オルフェオのまわりを復讐の女神や亡霊たちが躍る。
鎮まってください。復讐の女神よ、亡霊よ。
復讐の女神と亡霊たち
哀れな若者よ、お前は何をしに来たのだ?
亡霊よ、私もお前たちと同じように苦悩の中にいる。心の中に地獄があるのだ。
愛の悩みを感じたことがあるのならば、私の嘆きも悲しみもわかるだろう。
復讐の女神と亡霊たち
これまでに感じたことのない哀れみを感じて、我らの怒りを鎮めていく。扉を通っていくがいい。勝利者に安全な道を用意しよう。
復讐の女神と亡霊たちが遠ざかっていき、オルフェオは冥界に足を進める。
第2場
花の咲く草原。「精霊の踊り」 Reigen Der Seligen Geister
澄み切った空に、輝く太陽。小川のせせらぎに、さわやかなそよ風。ここは、選ばれた霊が住む楽園だ。だが、私はエウリディーチェを探さねば。
エウリディーチェはどこにいますか?
霊たち
花婿よ、もうすぐ愛の神がエウリディーチェをお前に返してくれる。エウリディーチェは蘇り、以前の美しさを取り戻した。
幸運な霊たちよ、私の待ちきれない心を許してほしい。愛し合ったことがあるのならば、彼女を求める気持ちがわかるだろう。
霊たちに導かれてエウリディーチェがくる。オルフェオは彼女を見ないように手を取り、冥界を出ていこうと歩き始める。
オルフェオとエウリディーチェ、オペラ:第3幕のあらすじ
第1場
洞穴を歩く、オルフェオとエウリディーチェ。オルフェオは彼女の顔を見ずに、手をつないで先導している。
私のあとをついておいで。
あなたなの?夢なのかしら?あなたも私も生きているの?どうして?
愛しい花嫁よ、私は生きている。君を迎えに来たんだ。ふたりでまたこの世の太陽を見ることができるのだよ。
エウリディーチェは、オルフェオの手を離す。
でも、再会の喜びの時に、あなたは私を見てはくれない。抱きしめてくれないの?せめて私を見てちょうだい。
今は急いでここを出よう。(これは予想していたことだ。耐えよう。)黙ってついておいで。(なんと残酷な苦しみ。)
黙れですって?あなたは安らぎの中にいる私を起こしたのですよ。ああ、オルフェオ、私は死にそうだわ。(仮病)
(振り返りそうになるが)いや、私は何をしようとしていたのか。
愛する人よ、私を思い出してくださいね。(苦しそうなふり)
オルフェオが、エウリディーチェを見る。
神々よ、私に何が起こったのでしょう。私は死ぬ!
エウリディーチェの死。
ああ、なんということをしてしまったのだ。彼女はもう生きていない。もう一度彼女を失ってしまった。
エウリディーチェを失って、どうしたらいいのか。愛しい人なしにどこに行けばよいのだろう。地上からも天からも助けはない。
「エウリディーチェを失って」Che faro senza Euridice?
オルフェオは命を絶とうとする。
「エウリディーチェを失って」Che faro senza Euridice?|オルフェオとエウリディーチェ
第2場
オルフェオのもとに、愛の神が現れる。
オルフェオ、何をするのだ。愛の神を見なさい。
あなたですか。この苦しみの時に何の用ですか。
エウリディーチェを返そう。お前の真心はよく分かったのだから。
エウリディーチェが目覚める。
夫よ。
なんと感謝したらいいのか。
その言葉で充分だ。地上へ行きなさい。愛を享受するのだ。
第3場
愛の神を称える神殿。オルフェオ、エウリディーチェ、愛の神、羊飼いの男女がお祝いをしている。
愛の神、万歳。
抗いがたい力に翻弄されても、恋人たちの愛の前では、苦悩は忘れ去られるだろう。
嫉妬に苦悩することがあっても、真心は戻るのです。心を苦しめた疑いは喜びに変わります。
合唱
愛の神、万歳。