ドン・カルロ(ドン・カルロス)は、ヴェルディによる全5幕のオペラです。ドン・カルロには、フランス語とイタリア語の複数バージョンがあります。上演機会が多いのは、イタリア語のミラノ版かモデナ版です。ミラノ版は全4幕、モデナ版は全5幕です。ふたつのバージョンの違いは、第1幕を省略するか、しないかです。
ドン・カルロ(ドン・カルロス)、オペラ:人物相関図
ドン・カルロ(ドン・カルロス)、オペラ:登場人物
ドン・カルロ | スペイン王子 | テノール |
フィリッポ2世 | スペイン国王 | バス |
ロドリーゴ | ポーザ侯爵 | バリトン |
エリザベッタ | フランス王女、結婚でスペイン王妃 | ソプラノ |
エボリ公女 | エリザベッタの女官、スペインの貴族 | メゾソプラノ |
宗教裁判長 | カトリック教会の最高権力者 | バス |
- 原題:Don Carlo・Don Carlos
- 言語:イタリア語・フランス語
- 作曲:ジュゼッペ・ヴェルディ
- 台本:フランソワ・ジョセフ・メリ、カミーユ・デュロークル
- 原作:フリードリヒ・フォン・シラーの戯曲「ドン・カルロス」
- 初演:1867年3月11日 パリ オペラ座
- 上演時間:3時間15分(第1幕30分 第2幕50分 第3幕35分 第4幕50分 第5幕30分)
ドン・カルロ(ドン・カルロス)、オペラ:簡単なあらすじ
スペインとフランスは戦争中であり、国民は疲弊している。事前の交渉で、スペインの王子・ドン・カルロとフランスの王女・エリザベッタが結婚することになった。フランスの森で、カルロとエリザベッタは出会い、恋に落ちる。交渉が始まると、フランス国王はエリザベッタとスペイン国王の結婚を望むようになる。エリザベッタは民衆のために結婚を受け入れる。
スペインで、フィリッポ二世とエリザベッタの結婚が行われる。カルロは絶望する中、彼の祖父カルロ五世の亡霊を見る。カルロには、スペインから宗教弾圧をうけるフランドル出身の友人ロドリーゴがいる。ロドリーゴはカルロがフランドルを救ってくれると信じている。
スペインで、フィリッポ二世とエリザベッタの結婚が行われる。絶望の中、カルロは祖父カルロ五世の亡霊を見る。カルロには、スペインから宗教的弾圧を受けているフランドル出身の友人ロドリーゴがいた。ロドリーゴは、カルロがフランドルを救ってくれると信じている。
私の近くに来てください。あなたの心をより強くするのです。
ドン・カルロとロドリーゴ
共に生き、共に死のう。それは究極の悲願であり、叫びだ。自由を!共に生き、共に死のう。最後の叫びは、自由だ!
ロドリーゴはフィリッポ二世からも信頼されている。フィリッポ二世はロドリーゴにカルロとエリザベートの関係を探るよう依頼する。
ある疑惑が私を悩ませる。女王と我が息子。彼らの運命はお前に委ねよう。彼らの心を調べてくれ。
カルロはフランドルのために独断で行動する。フィリッポ二世は息子の追放、処刑を決定する。ロドリーゴはカルロの罪のために死ぬ。彼は死に際に、エリザベッタが修道院で待っていることをカルロに告げる。
カルロはエリザベッタに別れを告げ、フランドルへ向けて出発しようとする。そこにフィリッポ二世が乗り込んできて、二人を懲らしめる。その騒ぎの中、カルロ五世の亡霊がカルロを墓の中に引きずり込む。
ドン・カルロ(ドン・カルロス)、オペラ:第1幕のあらすじ
フォンテーヌブローの森・フランス
日が暮れて、遠くに宮殿が見える。森には、薪を割る木こりやたき火のそばに座る女性たちがいる。フランス王の娘、エリザベッタが、従者と共に馬でやってくる。エリザベッタが木こりに小銭を投げ、従者を連れて去る。誰もいなくなると、木陰からドン・カルロが現れる。
フォンテーヌブロー、広大で寂しき森よ。私は父に逆らって、スペイン大使の行列に紛れ込みフランスに来た。そして、美しい婚約者を見ることができた。彼女の笑顔は太陽の輝きだ。
角笛の音が聞こえてくる。
日が暮れて一番星が輝いている。帰り道はあるのだろうか?この森は真っ暗だ。
エリザベッタと小姓が森に迷って、戻ってくる。カルロはすぐに身を隠す。
小姓テオバルド
帰り道がわかりません。
疲れたわ。
ふたりのもとにカルロは姿を現す。
私はスペイン人です。
あなたはスペイン大使の同行者ですか?
そうです。高貴なお方。
小姓テオバルド
よかった。遠くに見える光が宮殿でしょう。私は迎えを呼ぶためにここを離れます。
小姓が去る。エリザベッタが岩に座ると、カルロはひざまずいて、地面の小枝を集める。
戦場では小枝を集めて火をおこします。ほら、すでに火花を散らし、炎が輝いているでしょう。
今夜、和平を結ぶことができるでしょうか?
我が王の息子ドン・カルロと協定が結ばれるでしょう。
彼のことを教えて下さい。恐れを感じています。私はフランスを去ります。ですが、彼を愛したい。
彼は愛に燃えて、あなたの心に応えるでしょう。
なぜ私の胸は高鳴るの?あなたはどなたですか?
王子の使いです。彼はあなたに絵姿を贈りました。
カルロは宝石で飾られた小箱を彼女に渡す。
開ける勇気がないわ。でも、私は彼に会いたい。(箱を開けて)まあ、神様。
私がカルロです。あなたを愛しています。
大砲の音。小姓が戻ってくる。松明を持った従者たちも到着する。小姓はエリザベッタにひざまずく。
小姓テオバルド
あなたに幸福な伝言をお伝えします。女王様、あなたに敬意を表します。フィリッポ王の花嫁様。
いいえ、王子と婚約するはずよ。私は父と約束したのよ。
小姓テオバルド
王は、スペイン王とあなたを運命づけました。あなたは女王です。
胸に悪寒が走った!地獄の口が開かれる。
運命の時が来た。無慈悲な運命に逆らい戦うのは、より残酷になるだろう。この痛みから逃れるために、負の連鎖から逃れるために、私は最後まで死に抗ってみせる。
運命の時が来た。私の人生は至福だったが、今は残酷で致命的だ。私は永遠に鎖を引きずり続けるのか?
人々が祝福の合唱を歌う。スペイン大使のレルマ伯爵が現れる。
レルマ伯爵
フランス国王は、あなたをスペインとインドの君主にすることを望みました。この婚約は友情の印です。ですが、フィリッポ王はあなたに自由を与えることを望んでいます。あなたは王の手を歓迎しますか?
フランスの女性たち
王が差し出したその手を受け入れて下さい。慈悲を。ついに平和が訪れるのです。私たちに憐れみを。
…はい。
人々が祝福する中、カルロとエリザベッタは絶望している。
ドン・カルロ(ドン・カルロス)、オペラ:第2幕のあらすじ
第1幕
サン・ジュスト修道院の回廊
夜明け。修道士が礼拝堂で祈っている。奥には、カール五世の墓が見える。
修道士たち
カール大帝は、もはや無言の墓にいる。彼は世界に君臨することを望んだ。彼の誇りは計り知れず、彼の誤りは重大てあった。
ゆっくりと夜が明ける。回廊に青ざめたカルロがくる。
カール五世が命を落としたサン・ジュスト修道院で、私は無駄に平和を求める。
修道士
地上の悲しみは回廊では追いかけてくるものだ。心の戦いは、天に行けば慰められるだろう。
彼の声!私の心は震える。皇帝が見えたのだ。彼は今でも回廊に現れると言われている。
カルロには、修道士の声がカルロ五世の声に聞こえた。この修道士は、カール五世となって後で現れる。
修道士が去る。ロドリーゴが回廊に入る。
私の王子!その時が来ました。フランドルの民があなたを求めています。彼らに救いを与えて下さい。
お前の胸で泣かせてくれ。罪深い愛で愛している!エリザベッタ!
あなたの義理の母!
青ざめた。地面に目を伏せた。お前も私から目を背けるのか?
いいえ、ロドリーゴはまだあなたを愛しています。私の王子!王はこの秘密に気が付いていないですよね?
ああ!
フランドルに出発するために王から許しを得て下さい。あなたの心を静めて、あなたにふさわしい行いをして下さい。
鐘が鳴る。
聞いて下さい!霊廟の扉はすでに開かれている。ここにフィリッポ王と女王が来ます。
ドン・カルロとロドリーゴ
神よ、魂に愛と希望を吹き込もうとされた方よ。あなたは心に自由への希望を呼び起こすだろう。共に生き、共に死ぬことを誓い合うのだ。
「友情の二重唱」Dio, che nell’alma infondere
「友情の二重唱」Dio, che nell’alma infondere|ドン・カルロ
フィリッポ王とエリザベッタ、修道士たちが現れる。フィリッポ王はカール五世の墓の前で少しひざまずく。一行は去っていく。
私は彼女を失った。彼女は彼のものになった。
私の近くに来てください。あなたの心をより強くするのです。
ドン・カルロとロドリーゴ
共に生き、共に死のう。それは究極の悲願であり、叫びだ。自由を!共に生き、共に死のう。最後の叫びは、自由だ!
第2幕
サン・ジュスト修道院の前にある庭園
エリザベッタに仕える女官たちは、噴水周りの芝生に座っている。
この敬虔な壁の中には、スペインの女王しか入ることができません。まだ時間がかかりそうです。皆さん、何か歌いませんか?
女官たち
いいですね。歌いましょう。
美しい宮殿の庭で、ヴェールですべてを隠した女が、星を見ていました。ムーア人の王は、彼女を口説きました。「王があなたを招待する。愛しい妃はすでにいない。さあ、ヴェールを脱ぎなさい。私の王座はあなたのものだ。」「あなたを満足させましょう。」「ああ、あなたは妃だったのか。」王は叫んだ。
「ヴェールの歌」Nei giardin del bello
「ヴェールの歌」Nei giardin del bello|ドン・カルロ
あとで、カルロがヴェールをかぶったエボリ公女をエリザベッタと間違えて口説いてしまう。
エリザベッタが修道院から出てくる。
幸せな歌声が響いているわね。(…ああ、私が幸せだった日々は終わった。)
ロドリーゴが、女官たちのいる庭園に現れる。
奥様、あなたのお母様から手紙を預かりました。
ロドリーゴはエリザベッタに、手紙とカルロからのメモを一緒に渡す。エリザベッタは悩みながらもメモを読む。
(私たちを結びつける思い出のために、大切な過去の名において、彼に自らを託してください。カルロ。)
ロドリーゴは雑談の中で、カルロの望みをぼやかして言う。
私たちの愛するカルロは悲しみの中にいます。彼が再びあなたに会うことができれば、彼は安らぐでしょう。
「私たちの愛するカルロ」Carlo, ch’è sol il nostro amore
ロドリーゴは、表立ってカルロの望みをエリザベッタに伝えることができない。エボリ公女はカルロに好かれていると勘違いする。
カルロは私が好きなのかしら?以前、女王の側にいたとき、彼が震えているのを見たわ。どうして隠すのだろう?
もう一度彼に会えば、死んでしまう。(小姓に)行きなさい。私は息子に会う準備ができています。
カルロがやってくる。ロドリーゴは女官たちを去らせて、カルロとエリザベッタだけにする。
お願いがあって参りました。王に私をフランドルに行かせるように頼んで下さい。…なんて不幸だ。耐えられない。
「二重唱」Io vengo a domandar
フィリッポ王が私の願いを聞くならば、あなたはフランドルに出発できるでしょう。
去り行く哀れな者のために、一言もないのか!
なぜ私の冷静な心を責めるのですか?崇高な沈黙を理解すべきです。カルロよ、さようなら。この地であなたの側で生きていられたら、私は天国にいると信じられたでしょう。
カルロは意識を失って倒れる。
天よ、彼の命はすでに消えています。悲しみは彼を殺してしまう。
天から声が降ってくる。愛を語るために降りて来たのか?
カルロはエリザベッタを抱きしめようとする。エリザベッタは逃れる。
そうしたければ、あなたの父を亡き者にして、彼の血に染まったまま、母を祭壇に導きなさい。行きなさい。父を追い出すのです。
私は呪われている。
カルロは絶望して逃げ出す。小姓が入り、次いでフィリッポ王、ロドリーゴ、エボリ公女らが入る。
なぜ女王が一人なのか?我が王室の規則は知っているはずだ。どの婦人が彼女と一緒にいるはずだったのか?
ひとりの女性が進み出る。
伯爵夫人、明日の朝にあなたはフランスに帰りなさい。
泣かないで、私の友達。あなたはスペインから追放されましたが、私の心からは追放されていません。故郷に戻りなさい。私の心はあなたについていきます。
エリザベッタや女性たちは出ていく。ロドリーゴも続いて去ろうとすると、王に引き留められる。
お前は残れ。なぜ王に会うことを希望しないのか?私はお前に褒美を与えることができるのだぞ。
陛下、私は報酬をいただいています。法律が私の盾です。
私は高貴な精神が好きだ。お前の大胆さを許そう。
陛下。私はフランドルから来ました。かつてあれほど美しかった国は、光が失われ、恐怖に掻き立てられています。人々に自由を与えて下さい。
スペインには、旧教「カトリック教会」と新教の「プロテスタント」の間で宗教対立があった。フランドルは新教を信じる者が多く、弾圧されていた。現在のフランドルは、スペインの国土ではなく、フランス、ベルギー、オランダにまたがっている。
変わった夢想家だな。お前は思想を変えるべきだ。王は何も聞いていない。だが、宗教裁判長はお前を見ているぞ。私はお前を近くに置いておきたいのだ。
いいえ、今のままでよいのです。
私の宮殿を見よ。苦悩に包まれている。ふがいない父親、最も悲しい夫だ。ある疑惑が私を悩ませる。女王と我が息子。彼らの運命はお前に委ねよう。彼らの心を調べてくれ。
予期せぬ夜明けが訪れた!王の心が私に開かれている。
安らぎの日々が戻ってくるように。宗教裁判長はお前を見ているぞ。
王はロドリーゴに手を差し出し、ロドリーゴはひざまずいてそれに口づけする。
ドン・カルロ(ドン・カルロス)、オペラ:第3幕のあらすじ
第1幕
城内・女王の庭園
月明かりの下で、カルロは手紙を読んでいる。
「真夜中に女王の庭園で。」真夜中だ!彼女がもうすぐやってくる。
ヴェールをかぶったエボリ公女が入ってくる。カルロはエリザベッタだとみなしてしまう。
花に囲まれて登場するのは、最愛の人。あなただ。祝福された魂は、すでに悲しみを忘れてしまった。
このような愛は、この上ない喜びです。
エボリ公女は、ヴェールを取る。
(女王ではないのか!)
何を考えているの?彼は青ざめて動かず、唇は固まっている。私たちの間にどんな亡霊がいるというの?
私たちは二人とも奇妙な夢を見たようです。
夢ですって?わかったわ。あなたは女王を愛しているのね。
許してくれ。
ロドリーゴが庭に入る。
彼は錯乱しているのです。彼の言うことは信じてはいけません。
私はすべてお見通しよ。
何だと!震えるがいい。私は!
あなたが王の側近なのは知っている。でも、私は手ごわい敵よ。あなたの力は知っている。でも、あなたは私の力を知らない。
愚かな私!義理の母の名を汚した。真実を調べれられるのは神のみだ。
彼女は天の美徳に隠れて、愛の杯を空にしていたのね。
ロドリーゴが剣を抜く。
お前はここで死ぬ。
ロドリーゴ。落ち着いてくれ。
さっさと私を傷つければいいでしょ?ほら、やりなさいよ。
ロデリーゴは剣を投げる。
いいや。私には希望が残っている。
震えているな。偽りの息子よ。私の復讐は始まっている。
エボリ公女は怒って庭を出ていく。
カルロ様。もし重要な書類を保管しているのなら、私に託して下さい。
お前に?王の側近に?
私を疑うのですか?
お前は私の心の希望だ。すべての信頼を置いている。重要な書類を渡そう。お前に私を委ねよう。
第2幕
アトーチャ大聖堂前の広場
右に教会があり、左に宮殿がある。広場の下には火あぶりの用意がされている。広場から炎の上部だけが見える。広場に入ろうとする群衆を兵士たちが抑えている。修道士たちが処刑される人々を連れてくる。
エリザベッタやロドリーゴなどの王室の行列が現れる。教会の扉の前に、王の伝令が立つ。
王の伝令
主の栄光よ、開かれよ。我らの王を返せ。
扉が開き、王が出てくる。
王冠を頭に乗せた時、神に誓った。炎と剣で罪人に死を与えることを。
ドン・カルロが率いる、6人のフランドルの使節団が突然現れて、王の前にひれ伏す。
(ここにカルロが!)
(彼は何を考えているのか?)
彼らはブラバントとフランドルの使者です。
6人の使者
すべての民があなたに懇願しています。お慈悲を。
お前たちは神を裏切り、王を裏切るのか。衛兵!彼らを私から遠ざけろ。
カルロ、ロドリーゴ、エリザベッタ
お慈悲を。彼らは瀕死であり、最期の息をしているのです。
修道士たち
王の尊厳を見せて下さい。
陛下、今こそ私が動く時です。神よ、私の額に冠をつけることを望むなら、スペインにふさわしい王を用意してください。ブラバントとフランドルを私に与えてください。
軽率だ。王を倒す斧をお前に与えよと私に言うのか。
(震えるわ!)
(彼は負ける。)
カルロは王に剣を向ける。
私はここで天に誓う!私は救世主になる。フランドルの人々よ。私だけが!
私の玉座を支える者よ。彼の剣を奪え。
衛兵たちは立ちすくんで何もできない。激怒した王は、衛兵の剣を掴む。
(カルロに)私に剣を。
お前が!
カルロはロドリーゴに剣を渡す。ロドリーゴはその剣を王に差し出す。
侯爵。公爵だな。それでは、宴を披露しよう。
ロドリーゴはポーザ侯爵だった。この件で公爵に位が上がった。
王は女王の手を取り処刑を見る席に移動する。臣下も続く。火あぶりが行われる。
ドン・カルロ(ドン・カルロス)、オペラ:第4幕のあらすじ
第1幕
マドリード・国王の書斎
王は瞑想している。
彼女は私を愛していなかった!フランスからやってきたとき、彼女は私の白髪を見て悲しそうな顔をしていた。
私は威厳のあるマントでひとり眠ろう。人生の終わりには、霊廟にひとり眠るのだろう。
「ひとり寂しく眠ろう」Ella giammai m’amò!
「ひとり寂しく眠ろう」Ella giammai m’amò!|ドン・カルロ
レルマ伯爵が書斎に入る。続いて老人で盲目の宗教裁判長が、2人の修道士に支えられて入る。
宗教裁判長
私は王の前にいるのか?
そうです。私は判断に迷っています。カルロは私に敵対しています。
宗教裁判長
彼にどのような処罰を選ぶのか?
追放か、斧で処刑か。息子を死に追いやっても、あなたの手は私を許しますか?
宗教裁判長
神は私たちを救済するために、犠牲になったのだ。私はあなたに尋ねたい。これまでスペインは、異端者が支配したことはない。だが、それを望む者がいる。彼は王の友人であり、忠実な臣下だ。
ロドリーゴのこと。
つらい日々を乗り越えるために、むなしく求めていた。男だ!忠実な!見つけたのだ!
宗教裁判長
ポーザ公爵を要求する。私はこれまで強大な王国のために二人の王を授けてきた。費やしてきた日々を破壊したいのか?
宗教裁判長が立ち去る。
いつも祭壇の前に王座は屈するのか。
エリザベッタが入ってくる。
お裁きを。私は国王の誠意を信じています。見知らぬ敵にひどい仕打ちを受けています。鍵をした宝石入りの小箱が盗まれました。
「お裁きを」Giustizia
あなたが探しているものはここにある。開けて下さい。
エリザベッタは拒否する。フィリッポ王は小箱を壊す。
カルロの肖像画だな。あなたの宝石の中にある。
私はあなたの息子と婚約していました。今は、私はあなたのものです。私はユリのように潔白です。
お前は私を弱いと思い、挑んでいるのか?もしお前に裏切られたなら、血を流さずにはいられない。
エリザベッタは気絶する。王が扉を開け、ロドリーゴとエボリ公女が入る。
私はなんてことをしてしまったの。高貴な心を裏切ってしまった。
彼女は誓った忠誠を汚してはいない。彼女の誇りがそうさせるのだろう。
今こそその時だ。スペインに幸せな未来を残すために、男が死ぬのだ。
エリザベッタの意識が戻る。
何があったの?私はこの地でよそ者だ。もうこの世に希望はない。
フィリッポ王とロドリーゴは去る。エリザベッタとエボリ公女が残る。エボリ公女はひざまずく。
お許しください。あの小箱を持ち去ったのは私です。あなたを密告したのは私です。
あなたが!
あなたへの憎しみと残酷な嫉妬がそうさせたのです。私はカルロが好きでした。ですが、カルロは私を軽蔑したのです。
彼を愛していたのね。立ちなさい。
いえ、まだ過ちがあるのです。王に誘惑されて負けました。私があなたを非難したのは過ちです。私が罪を犯したのです。
あなたは宮廷を去らなければならない。新しい日を迎えるまでに、国外に出るか、ヴェールかを選びなさい。
エリザベッタは出ていく。
お前を呪う、我が美貌よ。私の罪は恐ろしく、決して消すことができない。女王よ、私の心の過ちはあなたを焼き尽くしてしまった。私は修道院に入るしかない。なんてこと!カルロは?私に残された時間はわずかだ。私は彼を救うのだ。
「呪わしき美貌」O don fatale
第2幕
地下牢
カルロは座ったまま頭を抱えている。ロドリーゴが入ってくる。
ロドリーゴ。私の牢に来てくれて、ありがとう。お前にはわかっているだろう。彼女への愛が私を苦しめ、殺すのだ。
あなたに私の愛を知ってもらいましょう。あなたはこの恐ろしい地獄から抜け出すのです。
何を言っているんだ?
ここで別れを告げなければいけません。私の最後の時がやってきました。もう二度と会うことはないでしょう。神が天国で二人を結び付けますように。なぜそんなに泣くのですか?
もう時間がないのです。私はすでに恐ろしい雷を身にまとっています。あなたはもはや王の敵ではありません。フランドルの扇動者は私です。
誰がそれを信じると言うのか?
証拠は恐ろしいものです。あなたの書類が私のもとで見つかりました。謀反の明確な証拠です。
二人の男が牢の階段を降りてくる。一人は聖職者のローブを身にまとい、もう一人は銃を持つ。
国王にすべてを明かす。
フランドルのために、偉大な仕事のために留まってください。成し遂げて下さい。黄金の新時代を開くのです。
刺客が銃を撃つ。
カルロよ、聞いて下さい。義理の母が明日、サン・ジュスト修道院であなたを待っています。彼女はすべて知っています。私のカルロ、手を差し伸べてください。私は死にますが、心の中では幸せです。このようにスペインの救世主が現れるようにお役に立つことができたのですから。
「ロドリーゴの死」O Carlo ascolta
「ロドリーゴの死」O Carlo ascolta|ドン・カルロ
ロドリーゴが死ぬ。カルロはその体に倒れる。フィリッポ王がスペインの貴族を引き連れてやってくる。
カルロよ、剣を返そう。
下がれ。あなたの手は血で汚れている。私たちは兄弟の絆を結んでいた。彼は私を愛していた。彼の命は私のために犠牲になった。もう息子はいない。私の王国は、彼のもとにある。
(誰がその男を私に返してくれるんだ?)
民衆がなだれ込んでくる。
民衆
私たちを逮捕する者は滅びなければいけない。解放しろ!誰も我々を逮捕させない!王子を釈放しろ!
覆面をしたエボリ公女がカルロのもとに現れる。
(カルロに)行きなさい。逃げるのです。
カルロとエボリ公女は去る。民衆で混乱する中、宗教裁判長が出てくる。
宗教裁判長
神が守る王にひざまずけ。ひれ伏せろ!
民衆はフィリッポ王と宗教裁判長にひざまずく。
ドン・カルロ(ドン・カルロス)、オペラ:第5幕のあらすじ
サン・ジュスト修道院
月の輝く夜。エリザベッタはカール五世の墓の前でひざまずく。
世のむなしさを知り、天で安息を得る者よ。もしあなたが天でまだ泣いているなら、私の悲しみのために泣き、私の泣き声を主の御座に届けなさい、私の泣き声を主の御座に届けなさい。
カルロがここに来る!彼を今すぐ出発させ、私を忘れさせよう。私はポーザに彼の日々を見守ることを誓った。彼が自らの運命に従うなら、栄光が彼を追うでしょう。私の日々は黄昏にある。
高貴な国、フランスよ。フォンテンブローよ。永遠の愛を誓い、神は聞き届けて下さった。しかし、永遠は一日しか続かなかった。さようなら、青春の日々よ。私は残酷な苦しみに屈して、願いはひとつだけ。天国の安らぎだ。私の嘆きを主の足元に届けて下さい。
「世のむなしさを知る神よ」Tu che le vanità
「世のむなしさを知る神よ」Tu che le vanità|ドン・カルロ
カルロが入る。
彼女だ。
「二重唱」Un detto un sol
あなたに忘れることと生きることを願います。
ええ、強くなりたいのです。ですが、愛が壊れれば私は死んだようなものなのです。
いいえ、ロドリーゴを考えなさい。彼が犠牲になったのは愚かな考えのためではありません。
フランドルで、彼の下に参じよう。はかない夢を見て、彼は消えてしまった。滅びゆく人々は私に手を伸ばしている。彼らのもとへ喜んでいこう。私が死んでも勝利しても、心あるあなたは称賛か涙をくださるでしょう。
そう、英雄的な行い、聖なる炎です。私たちにふさわしい愛、強く燃え上がる愛。行ってください。滅びゆく民衆を救ってください。
二人
永遠にさようなら。永遠に。
フィリッポ王と宗教裁判長、役人たちが入ってくる。王は女王の腕をつかむ。
そう、永遠に!二人の犠牲が必要だ。
宗教裁判長
審問所はその務めを果たす。
神が私の仇をとるだろう。血の裁きは、彼の手で砕けるのだ。
カルロがカール五世の墓へ一歩下がる。回廊の扉が開き、第2幕で登場した修道士が現れる。マントと王冠を身に着けたカール五世である。
修道士
地上の悲しみは回廊では追いかけてくるものだ。心の戦いは、天に行けば慰められるだろう。
宗教裁判長
カール大帝の声だ。
私の父!
ああ、神よ!
カール五世は、カルロを墓の中に引きずり込む。