トスカ 第3幕
カヴァラドッシは、死を前にして、自分の別荘で過ごしたトスカとの愛の日々を思い出します。絶望の中、カヴァラドッシが一人で歌い上げるのが「星は光りぬ」です。短めのアリアで、カヴァラドッシの悲しみが引き立ちます。
「星は光りぬ」E lucevan le stelle【歌詞と対訳】
E lucevan le stelle…
ed olezzava la terra…
stridea l’uscio dell’orto…
e un passo sfiorava la rena…
Entrava ella, fragrante,
mi cadea fra le braccia…
Oh! dolci baci, o languide carezze,
mentr’io fremente
le belle forme disciogliea dai veli!
Svanì per sempre il sogno mio d’amore…
L’ora è fuggita…
E muoio disperato!
E non ho amato mai tanto la vita!…
星々は輝いて
大地は香る
庭の扉が音を立てる
砂を踏みしめる足音
彼女は入り、香りよく
僕の腕の中に倒れ込んだ
ああ!甘いくちづけ!物憂げな愛撫
僕は震えながら
ヴェールから彼女の美しい体を出す!
僕の愛の夢は永遠に消えた
時は過ぎた
僕は、絶望に打ちひしがれる。
これほどまでに、人生を愛したことはない!
「星は光りぬ」の解説
「星は光りぬ」の中に出てくる「庭」
・ カヴァラドッシが友人の逃亡犯を匿った家の庭
・ 自分の別荘として、トスカの愛の日々を過ごした家の庭
どちらも同じ庭です。オペラの前半で、カヴァラドッシが逃亡犯の友人に隠れるようにいった、あの「庭」です。
教会近くの僕の別宅にひとまず行ってくれ。何かあったら、庭の井戸に入ればいい。井戸の中に横道があり、隠し部屋があるから。
教会から離れて位置にある、カヴァラドッシの別荘。ローマ近郊、花のあふれる庭がある別荘のイメージです。
香り描写 「大地の香り」「トスカからの甘い香り」
音の描写 「扉の音」「砂を踏む足音」
情景が目に浮かぶような歌詞です。この後の、トスカとカヴァラドッシの再会の喜びから、一転してカヴァラドッシの死、トスカの身投げまで、話が続いていきます。