魔笛はモーツァルトが最後に完成させたオペラです。一見おとぎ話のように見えますが、1幕と2幕の善と悪の逆転、オペラ全体に登場する意味深な数字「3」など、興味深い要素が多い作品です。魔笛の見どころとして有名な夜の女王のアリア「Der Hölle Rache kocht in meinem Herzen」は、第2幕に登場します。
魔笛、オペラ:人物相関図
魔笛、オペラ:登場人物
タミーノ, Tamino | ある国の王子 | テノール |
パミーナ, Pamina | 夜の女王の娘 | ソプラノ |
パパゲーノ, Papageno | 鳥刺し・鳥を捕獲する人 | バリトン |
ザラストロ, Sarastro | 神殿の大祭司 | バス |
夜の女王, Königin der Nacht | パミーナの母 | ソプラノ |
パパゲーナ, Papagena | 老婆の姿で現れる若い娘 | ソプラノ |
モノスタトス, Monostatos | ムーア人 | テノール |
弁者, Sprecher | バリトン |
- 原題:Die Zauberflöte
- 言語:ドイツ語
- 作曲:ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト
- 台本:ヨハン・エマニエル・シカネ-ダー他
- 原作:クリストフ・マルティン・ヴィーラントの童話集「ドゥシニスタン」の「ルル、または魔笛」
- 初演:1791年9月30日、アウフ・デア・ヴィーデン劇場(閉鎖)、ウィーン
- 上演時間:2時間30分(第1幕70分 第2幕80分)
魔笛、オペラ:簡単なあらすじ
第1幕
架空の古代エジプト。夜の女王は、ザラストロにさらわれた娘パミーナの救出を王子タミーノに依頼する。彼の仲間は陽気なパパゲーノだ。
パミーナを救いましょう。
無事にパミーナを見つけたタミーノとパミーナは恋に落ちる。
第2幕
タミーノとパパゲーノはザラストロの試練に挑む。パパゲーノへの試練の褒美は、パパゲーナという名の女の子である。
可愛い女の子と出会うために、どうしてこんなひどい目に遭わされなきゃいけないの?
娘を誘拐された被害者であるはずの夜の女王は、亡き夫がザラストロに与えた太陽の力を取り戻すため、娘のパミーナにザラストロを殺すように命じる。
もしサラストロを殺さなければ、私はもうあなたの母ではありません。永遠にあなたと縁を切ります!
恐ろしいことはできません。
それを知ったサラストロは、復讐ではなく、愛ゆえに彼女を許すと言う。
タミーノとパパゲーノは試練を乗り越える。ザラストロの世界を襲いに来た夜の女王は、光の力によって倒される。人々は太陽の世界の美しさと知恵を讃える。
魔笛、オペラ:解説
第1幕と第2幕で、善人と悪人が逆転します。
第1幕
- 善…娘を誘拐された、夜の女王
- 悪…誘拐した、ザラストロ
第2幕
- 善…人々を英知の世界へ導く、ザラストロ
- 悪…娘にザラストロの殺害を命令・娘を男に差し出そうとする、夜の女王
魔笛、オペラ:第1幕のあらすじ
第1場
序曲
岩山
架空の古代エジプト。タミーノは蛇に追われ、逃げ惑っている。
助けてくれ!もうダメだ!
Zu Hülfe! zu Hülfe! sonst bin ich verloren
タミーノが気絶する。女性三人が現れて、蛇を倒す。
3人の侍女
(全員で)私たちの力よ。彼を救ってあげたわ。
あら、彼は素敵ね。
本当に!女王様にお見せしよう。私がここに残るわ。
いえいえ、私が残ります。皆、残りたいのね。それなら彼をここに残して、私たち3人で女王様のもとに行きましょう。
3人の侍女が立ち去る。タミーノは目を覚ます。
私は無事なのか?誰かがやって来る。隠れよう。
鳥を捕まえるのが、俺の仕事だ!陽気で元気なんだ。可愛い女の子と結婚したいな。
「私は鳥刺し」Der Vogelfänger bin ich ja
隠れていたタミーノは出てきて、パパゲーノに声をかける。
あなたは誰なのか?私は遠い国から来た王子だ。
俺は人間だ。捕まえた鳥を夜の女王と三人の女神に渡すんだ。彼女たちは鳥を食料と交換する。それが俺の生計を立てる方法だ。
では、その蛇を殺したのは君なのか?
なんだって?!うわ、蛇が死んでる。ああ、そうだよ。素手で殺したんだ。俺は力持ちなのさ。
3人の侍女が現れる。
3人の侍女
パパゲーノ!夜の女王が、あなたにこれを下さったわ。ワインの代わりにお水を。砂糖の代わりに石を。イチジクの代わりに金の錠前を。なんの罰かわかるわね。あなたが嘘をつくからよ。
パパゲーノは口に錠前をつけられて、しゃべることができない。
3人の侍女
若者よ。あなたを助けたのは私たちです。これはパミーナの絵姿です。あなたが絵姿に心を動かされれば、幸福と名誉を得ることができるでしょう。それでは私たちはひとまず去ります。反省しなさい、パパゲーノ。
3人の侍女は去っていく。タミーノは絵姿を見る。
なんて美しい絵姿なんだろう。私の心は燃えている。これは愛なのだろうか?そう、これは愛なのだ。
「なんと美しい絵姿」Dies Bildnis ist bezaubernd schön
2人の元に3人の女性が戻ってくる。
3人の侍女
どうか勇気を出してください。夜の女王は、あなたが娘を救い出すと言っています。女王の娘であるパミーナは、悪魔にさらわれました。彼女はこの近くの厳重に警備された城に捕らわれているのです。
私がパミーナを救います。
3人の侍女
女王様のおでましです。
山が左右に開く。玉座に座った夜の女王が現れる。
恐れることはない、若者よ。あなたは純粋で美しい心を持っています。私の心を慰めてくれるのは、あなたのような若者なのです。
「恐れずに、若者よ」O zitt’re nicht, mein lieber Sohn!
私は悩んでいます。娘が盗まれたので困っています。悪党は逃げてしまった。今でも目の前の光景が目に浮かびます。娘を助け出したいのですが、私の力はあまりにも弱すぎます。もし、あなたが娘を助けに行くなら、あなたは彼女の救世主になれるでしょう。
「私は悩み苦しんでいる」Zum Leiden bin ich auserkohren
夜の女王と3人の侍女は、去って行く。
今起きたことは夢か幻か?
パパゲーノは、彼の口元の錠前を指差す。
「五重唱」Hm! hm! hm! hm!
助けてあげたいが、私にその力はないんだ。
3人の侍女が戻ってきた。
3人の侍女
パパゲーノ、女王はあなたを許したわ。鍵を外しましょう。女王は王子に贈り物を用意しました。魔法の笛はあなたを守ってくれるでしょう。
タミーノは魔法の笛を与えられる。
さて、ここらで立ち去ろう。
3人の侍女
待ちなさい。あなたは彼と一緒に行くのよ。
いえ、結構です。あなたはパミーナがひどい男に捕まっていると言ったね。俺はそこに行きたくないよ。
3人の侍女
王子様があなたを守ってくれるわ。パパゲーノに銀の鈴をあげます。魔法の笛と銀の鈴が、あなたたちを守ってくれるでしょう。
パミーナが捕らわれている城に行くにはどうしたらいいのでしょうか?
3人の侍女
3人の童子があなたを城に案内します。さようなら。また会いましょう。
タミーノとパパゲーノは出発する。
第2場
サラストロの城の一室
モノスタトスによって鎖で縛られたパミーナが部屋に連れてこられる。
あなたには優しい心がない。私を殺して。
パミーナが気絶する。パパゲーノが部屋の窓から入ってくる。パパゲーノとモノスタトスが出会う。
え?不気味な奴だ。
モノスタトス
変なのはお前だ。
二人は部屋を飛び出す。パミーナが目を覚ます。パパゲーノが部屋に戻ってくる。
驚いた私がバカなんだ。黒い鳥がいるんだから、黒い人がいるのは当然だろう。あ、絵姿と同じような女の子だ。
この絵姿は私よ。なぜここに?
夜の女王は王子を信頼できると思った。王子は絵姿のあなたを見て、あなたを救おうと決めた。俺は彼と一緒にここに来たのだ。しかし、私たちはあなたを見つけることができなかったので、私が彼より先にここに来たんだ。さあ、行こう。
待って、もしあなたが悪い人だったら?
ひどい話だ。誰かを愛そうと考えていたら、そんなこと思わないはず。
そうね。あなたは優しい人ね。
そう言ってくれて嬉しいけど、俺には恋人がいないんだ。
愛を感じることができる男性なら、優しい心を持っている。愛の喜びを知りましょう。
「二重唱・恋を知る殿方には」Bei Männern, welche Liebe fühlen
愛の輝きを分かち合うのは、女性の役割だ。男と女は手を取り合って神の世界に入るのだ。
パミーナとパパゲーノは、部屋を出て行く。
第3場
森の中の3つの神殿
3人の童子が、タミーノに道を教える。
3人の童子
この道を進んでください。私たちの教えを聞いてください。心を落ち着かせ、忍耐強く、沈黙を守るのですよ。
ありがとう、賢い子どもたち。3つの門がある。門には、ここに知恵と仕事と芸術があると書かれている。この門をくぐろう。
タミーノが門をくぐろうとすると、どこからともなく「戻れ」という声が聞こえてくる。
弁者
大胆なよそ者よ、どこに行く?
ここには悪い人がいると聞いている。私はパミーナを助けに来た。娘を連れ去られた母親から頼まれたのだ。
弁者
あなたは間違っている。しかし、私は黙っていなければならない。今はこれ以上言えません。
パミーナは無事なのか?
弁者
彼女は大丈夫です。
弁者は去る。
パミーナは無事だ!神々よ、あなたを称えるために音を奏でよう。
タミーノは魔法の笛を吹く。
なんという不思議な笛の音だ。動物も喜ぶ。でも、ここにはパミーナがいない。彼女は大丈夫だろうか?
「なんという不思議な笛の音」Wie stark ist nicht dein Zauberton
彼は笛を鳴らす。何の反応もない。彼はもう一度鳴らす。パパゲーノは音で答える。
パパゲーノがパミーナに会えたんだ!
タミーノは二人を探すために立ち去る。パパゲーノとパミーナが現れる。
パミーナとパパゲーノ
急ごう。タミーノに早く会わないと、彼らに捕まってしまう。
「二重唱」Schnelle Füsse, rascher Muth
タミーノの笛の音。パパゲーノが音で答える。
タミーノの笛の音色だ!もうすぐ彼に会える。
モノスタトスは奴隷を従えて、パミーナとパパゲーノを捕らえようとする。
銀の鈴を鳴らそう!
モノスタトスと奴隷たちが陽気に踊り出す。彼らが去る。
パミーナとパパゲーノ
もし立派な人が銀の鈴を見つけることができれば、簡単に敵がいなくなる。そして、最高の平和の中で、彼は敵なしで生きることができるだろう。
突然、勇ましい音楽が流れる。
ザラストロが来るわ。
恐ろしい。このまま逃げてしまいたい。
従者たちの行列。サラストロは6頭のライオンに引かれた戦車で続く。
人々
ザラストロ万歳。彼にこそ、私たちは喜びをもって身を委ねるのです。彼がいつまでも賢者として人生を謳歌できますように。
「合唱・ザラストロ万歳」Es lebe Sarastro!
パミーナはザラストロの前にひざまずく。
私は罪を犯しました。あなたの力から逃れようとしたこともあります。しかし、私は無罪です。私はただ、私に言い寄ってきた黒い人から逃げたかっただけなのです。
立ちなさい。あなたは一人の男を愛している。私は愛を強制することはないが、自由を与えることはできない。
モノスタトスがタミーノを引き連れて現れる。
モノスタトス
忍び込んできた怪しい男を捕まえました。
あなたがタミーノね!なんて素敵なの!
やっと会えたね!
タミーノとパミーナはすぐに恋に落ちて、抱き合う。モノスタトスは、ふたりの姿を見て怒る。
モノスタトスを連れて行け。彼の足の裏を77回叩け。私は彼を罰しなければならない。
従者たちがモノスタトスを連れて行く。
さあ、彼らを試練の神殿に案内しよう。
彼らはタミーノとパパゲーノの頭に頭巾をかぶせる。ザラストロを賛美する従者たちの声が響く。
魔笛、オペラ:第2幕のあらすじ
第1場
森の中のピラミッド
ザラストロと神官たちが集まる。
行進曲「Marsch der Priester」 神官たちの行進
神々は、パミーナとタミーノが結ばれることを決定した。私がパミーナを高慢な母親から引き離したときと同じように、神々は決めたのだ。タミーノは試練を乗り越え、知恵の神殿を守り、美徳に報い、悪徳を罰する人物となる。
弁者
タミーノは試練を乗り越えられるでしょうか?彼は王子です。無理ではないですか?
彼は王子だが、人間である。人間だから試練を乗り越えられる。タミーノが試練を乗り越えられなかったとしても、彼は私たちよりも先に神々の元へ辿り着く。
イシスとオシリスの神。若いカップルを見守ってください。
「イシスとオシリスの神よ」O Isis und Osiris
第2場
神殿の庭
夜、遠くで稲妻が聞こえる。倒壊したピラミッドが見える。頭巾をかぶったタミーノとパパゲーノが連れてこられる。
パパゲーノ、私の近くにいるのか?
もちろんいるよ。すごく怖い!
ふたりの神官が灯りを手にしてやって来る。
神官
若者よ。あなたが直面する試練は命がけですが、その覚悟はありますか?今なら引き返せる。
パミーナを手に入れるためなら、どんな試練もいとわない。たとえそれが、私の命を危険にさらすことであっても!
神官
試練に耐える覚悟はあるか?私たちはお前のために美しい女性を用意した。彼女の名前はパパゲーナだ。
私はやりませんよ!でも、パパゲーナ…やってみようかな。
神官たち
お前たちには沈黙の試練に挑んでもらう。
女性の策略から身を守れ。賢者でさえも欺かれることがある。最後には見放され、死と絶望がお前を待っている。
「二重唱」Bewahret euch vor Weibertücken
神官たちが去る。3人の侍女が現れる。
3人の侍女
どうなっているの?こんな恐ろしい場所で、あなたは危険にさらされている。ここから出よう。あの人たちの戯言を信じてはいけない。
「五重唱」Wie? Wie? Wie?
俺たち、危ないのか?
話さないで。沈黙だ。
大きな落雷。3人の侍女は去る。神官たちが戻る。
神官
お前は沈黙の試練に打ち勝った。お前は決意と男らしさで誘惑に打ち勝ったのだ。さあ、次の試練に進みましょう。
彼らはタミーノとパパゲーノに頭巾を被せて、別の場所に移動させる。
可愛い女の子と出会うために、どうしてこんなひどい目に遭わされなきゃいけないの?
第3場
綺麗な庭
月が輝き、庭には美しい花が咲き乱れている。パミーナは東屋で眠る。
モノスタトス
恋をすれば誰でも幸せになれる。いつまでも女がいないのは地獄だ。彼女にキスしたい。月よ、隠れてくれ。無理なら目を閉じて。
「誰でも恋をすれば嬉しいものだ」Alles fühlt der Liebe Freuden
落雷と共に、夜の女王が現れる。
ここから立ち去れ!
モノスタトスは、物陰に隠れる。パミーナが目を覚ます。
私が送り込んだ男はどうしたのか?このままでは、母と子の関係が断絶してしまう。
彼は神々に仕える人々に導かれています。あなたともう会えないなんて悲しい。あなたが守ってくれるなら、どこにでも行きます。
私にはすでにお前を守る力はない。夫が亡くなってから、私の力はなくなった。死んだお前の父は、個人的な宝物を私とお前に残すと言った。だが、一番大切な太陽の力をザラストロに渡したのだ。
ザラストロは高潔な人です。
短剣を手に取れ!お前はザラストロを殺し、太陽の力を手に入れなさい。
地獄の復讐が私の胸に沸き、死と絶望が私の周囲を焼き尽くす!お前がザラストロを殺さなければ、私はもうお前の母ではない。私はお前と永遠に縁を切る!
「復讐の炎は地獄のように我が心に燃え」Der Hölle Rache kocht in meinem Herzen
夜の女王が去る。
恐ろしいことはできない。
モノスタトスは物陰から歩み出て、彼女から短剣を奪う。
モノスタトス
俺がお前の代わりにやってあげよう。お前とお前の母親は助かるんだろう?ただし、条件がある。俺を愛してくれ。
私の心はタミーノのものだ。
モノスタトス
それならば、お前を殺してやる!
ザラストロが現れる。
罰してやりたいところだが、この短剣があるのはパミーナの母親が悪人だからだ。夜の女王が悪いのだ。したがって、私はお前を罰することはない。去れ!
モノスタトス
それならば、彼女の母の味方になろう。
モノスタトスは走り去る。
母を許してください。私がいなくなってから、彼女はつらい思いをしているようです。
私は知っている。復讐ではなく、愛が必要なのだ。神々は若者に強さと勇気を与えるだろう。そして、あなたは彼と一緒になるのだ。
この神聖な神殿には、復讐の心はない。たとえ誰かが道を踏み外したとしても、私たちは愛を持って彼を導く。
「この聖なる殿堂では」In diesen heil’gen Hallen
第4場
神殿の広間
タミーノとパパゲーノが広間に連れてこられる。
神官
あなたたちは沈黙しなさい。もし沈黙を破れば、雷が鳴るだろう。ラッパの音が聞こえたら、広間を出てください。
神官が去る。
森にいれば、鳥の声を聞くことができたのに。
シッ!!
独り言なら問題ないでしょう?喉が渇いているんだ!ここでは一滴の水もくれない。
老婆が水を持ってやって来る。
婆さん、水をくれないか?あなたはとても親切ですね。どうぞ、お座りください。あなたは何歳ですか?ボーイフレンドはいますか?
老婆
私は18歳で、彼氏は10歳年上です。彼の名前はパパゲーノです。彼はここにいます。
あなたのお名前は?
雷が鳴る。老婆は去って行く。
もう懲りた。何もしゃべらない。
広間の天井から3人の童子が、料理が盛られたテーブルとともに降りてくる。
3人の童子
タミーノ、パパゲーノ。またお会いしましたね。私たちはザラストロから魔法の笛と銀の鈴を返すように頼まれて、あなたたちに会いにきました。
タミーノ、食べないのかい?すごく美味しいぞ。
3人の童子は去る。タミーノは魔法の笛を吹く。パミーナが広間に来る。
音が聞こえて、ここに導かれた。やっと会えたのに、どうしてそんなに悲しそうな顔をするの?どうして何も言ってくれないの?
ああ!(彼女に去るように合図をする)
パパゲーノ、教えて。タミーノはどうしたの?
フムフム。(食べ物を口に頬張って、去ってくれと合図)
私にはわかる。愛はもうないんですよね。愛の喜びは二度と戻ってこない。タミーノ、私を見てください。この涙はあなたのためです。
「私にはわかる、消え去ったのね」Ach ich fühls, es ist verschwunden
パミーナが去る。パパゲーノは食事をし、タミーノは黙って悲しんでいる。
タミーノ、俺でも口をつぐむことができるんだよ。
ラッパの合図が鳴る。
俺たちへの合図だ。俺はもう少ししてから行くよ。
(ついてこいよ、と合図する)
タミーノは広間を去り、パパゲーノは広間に残る。突然、ライオンが現れ、パパゲーノは悲鳴を上げる。タミーノが戻ってくると、魔法の笛でライオンを追い払う。二人は広間を後にする。
第5場
ピラミッド
僧侶たちが儀式をする。
神官たち
イシスとオシリスの神よ、なんという喜びでしょう。
O Isis und Osiris, welche Wonne!
ザラストロが現れる。タミーノが続いて入る。
これまでの試練を乗り越え、あなたは男らしく黙っていた。これからは、危険な修行の道を歩まなければならない。最後に、パミーナに挨拶をしてください。
頭巾をかぶったパミーナが連れてこられる。
愛する人よ、もうお会いできないのですか?
Soll ich dich, Theurer! nicht mehr seh’n?
どうか私を信じてください。私もあなたと同じ気持ちです。私はこの試練を乗り越えて、あなたに会います。
タミーノとパミーナは別々の場所に行く。
パパゲーノは迷っている。
タミーノ、どこにいるんだ?俺を置いていかないで!ここは一体どこなんだ?ああ、ここに来るべきではなかった。
弁者が現れる。
弁者
私が来なければ、あなたは永遠に暗黒の地を彷徨うことになるところでした。神々はあなたを許したのです。
もういいんだよ。俺みたいなヤツは、世の中にたくさんいるさ。今はワインが飲みたい。
弁者
よかろう。ワインだ。
ワインが美味しい、幸せです。銀の鈴を鳴らすよ。
俺が欲しいのは、恋人か妻だけだ。俺に優しくしてくれる女性がそばにいれば幸せなんだけどね。でも、美しい女性はたくさんいるのに、誰も俺を愛してくれない。
「娘か可愛い女房が一人」Ein Mädchen oder Weibchen wünscht Papageno sich!
弁者が去る。老婆が杖をついてやってくる。
老婆
二人で暮らすと誓いなさい。早く決めないと、一生ここにいることになるよ!
約束するよ。可愛い子を見つけるまでな。
パパゲーノが老婆の手を取ると、老婆は少女に変身する。雷が落ちる。
弁者
パパゲーナ、戻ってくれ。早すぎるんだ。パパゲーノ。引き下がらなければ、罰が当たるよ。
引き下がるくらいなら、罰の方がいいや。うわああ。
パパゲーノは奈落の底に落ちる。
第6場
小さな庭
3人の童子
もうすぐ朝を告げる太陽が、黄金の道を照らす。暗い迷信は消え去り、まもなく賢者が勝利する。
Bald prangt, den Morgen zu verkünden
大変だ。パミーナが悲しみのあまり正気を失っている。
パミーナは短剣を持っている。
(短剣を見て)あなたが私の花婿なんですね。私の苦しみを終わらせるのよ。愛のために苦しむより、死んだほうがましだ。
3人の童子
やめなさい。彼はあなたを愛しています。タミーノのところに行きましょう。
第7場
二つの大きな山
片方の山は火に包まれ、もう片方の山には滝がある。裸足のタミーノ。彼は試練に挑むため、扉の前に立つ。パミーナが現れる。
一緒に試練を乗り越えよう。夜も死も恐れない女性は、私たちの世界にふさわしい。
一緒に行きます。魔法の笛を吹いてください。その笛は、亡くなった私の父のものです。笛の音色が、私たちを守ってくれます。
タミーノとパミーナは試練に挑戦する。彼らは火をくぐり、水の中を通る。彼らは光に包まれる。
第8場
木のある庭
パパゲーナ、彼女に会いたいんだ。彼女からの返事はない。絶望的だ。首を吊る前に誰か止めてくれ。数えよう。1、2、3… でも、誰も私を止めてはくれない。もう十分だ!
「パパゲーナ」Papagena! Papagena!
3人の童子
やめなさい。銀の鈴を鳴らしてみなさい。
そうだな!銀の鈴を鳴らそう。
パパゲーナが現れる。
パパゲーノとパパゲーナ
パ、パ、パ。なんという喜びでしょう。神様は私たちに美しい子供たちを与えてくださる。小さなパパゲーノ。小さなパパゲーナ。
それは最高の気分だ。小さな子供たちが親と一緒に遊んでいる。親も子供と同じ喜びを感じている。自分と同じ姿の子どもを見て喜んでいる。これ以上の幸せがあるだろうか?
「二重唱・パ、パ、パ」Pa – Pa – Pa
第9場
神殿の外、夜
モノスタトス
神殿はこちらです。静かに忍び込もう。俺との約束を忘れないで。
私は自分の言葉を守る女だ。パミーナはあなたのものよ。
3人の侍女
あなたの復讐が果たされますように。
第10場
太陽の神殿
雷が鳴り響く。暗い舞台が明るい光に包まれる。ザラストロを中心に人々が集まる。
私たちの力は破れた。私たちは永遠の夜の中に沈むだろう。
太陽は夜を追放し、その力を打ち砕いたのだ。
人々
浄化された者たちよ、万歳。オシリスの神、イシスの神、あなたに感謝します。美と叡智が永遠の冠のように輝きますように。
「合唱」Heil sey euch Geweihten!