愛の妙薬 第2幕
アディーナは一粒も涙を流していないですが、彼女の涙を見たと錯覚したネモリーノは、「愛の妙薬」によって愛の願いが叶ったとしみじみと喜ぶのが「人知れぬ涙」です。
「人知れぬ涙」Una furtiva lagrima【歌詞と対訳】
Una furtiva lagrima
Negli occhi suoi spuntò …
Quelle festose giovani
Invidïar sembrò …
Che più cercando io vo?
M’ama, lo vedo.
Un solo istante i palpiti
Del suo bel cor sentir …
I miei sospir confondere
Per poco a’ suoi sospir! …
Cielo, si può morir;
Di più non chiedo.
ひそかな涙が
彼女の目にあらわれた
あの楽しげな娘たちを
うらやましそうだった
これ以上何を望むのだ?
彼女は僕を愛しているのがわかる。
ほんの一瞬でも、鼓動を
彼女の心(の鼓動)を感じられたら
僕のため息が交わせるなら
少しの間、彼女のため息と!
神様、僕は死んでもいい。
これ以上求めません
「人知れぬ涙」Una furtiva lagrimaの解説
「人知れぬ涙」では、「死んでもいい、これ以上求めません」としみじみ言っています。ですが、「人知れぬ涙」前後の言動は、自信たっぷり。
「人知れぬ涙」前、アディーナも恋の苦しみ、ときめきを味わうべき
(Io già m’immagino che cosa brami,
Già senti il farmaco, di cor già m’ami;
Le smanie, i palpiti di core amante
Un solo istante – tu dêi provar.)
(君が何に焦がれてるか、僕にはすでに想像がついてる。
もう薬が効いている。僕を愛してるんだ
切ない思いと、愛のときめきを
ほんの少しでも – 君も体験してください。)
「愛の妙薬」の力でアディーナが自分に恋をしたと思っているわりに、アディーナと会話中に、村の女の子たちに連れられてダンスに行き、彼女を置いてきぼりに。
「人知れぬ涙」後、アディーナが告白してくるまで、無関心なふりを
Eccola … Oh! qual le accresce
Beltà l’amor nascente!
A far l’indifferente
si seguiti così finché non viene
ella a spiegarsi.
ここに来るぞ、ああ!ますます
彼女がかわいい。生まれてくる愛によって!
無関心なふりを
彼女が来るまで、今のまま続けよう。
心を打ち明けてくれるまで
ネモリーノは駆け引きのつもりはなかったのかもしれませんが、いい戦略。普段とは違う態度を取ることで、彼女からの告白を引き出して、ふたりは恋人に。
「ため息がうっとうしい」からの「ふたりのため息を合わせたい」
第1幕の最初で歌われるアリア「なんと彼女は美しい」では、ネモリーノはアディーナを見て、
僕は馬鹿で、ため息をつくことしか出来ない。
アディーナはネモリーノの告白を断り、こう言っています。
あなたは「いつも」ため息をついて鬱陶しいわ。
その後、「愛の妙薬」(ニセ惚れ薬)を飲んで、アディーナが自分に恋をしていると思い込む。
僕のため息と彼女のため息を合わせたいな。
いろいろと「ため息」の伏線があって、「人知れぬ涙」にため息の言葉が出てくるのですね。