カヴァレリア・ルスティカーナ・全1幕
不倫の末に決闘をすることになった、トゥリッドゥは母親に泣き言を言います。「母さん、あの酒は強いね」です。
原作にはない「サンタの母親になってくれ」という歌詞が入ります。
「母さん、あの酒は強いね」Mamma,Quel vino è generoso【歌詞と対訳】
Mamma,
Quel vino è generoso, e certo
Oggi troppi bicchieri
Ne ho tracannati…
Vado fuori all’aperto.
Ma prima voglio
Che mi benedite
Come quel giorno
Che partii soldato.
E poi… mamma… sentite…
S’io… non tornassi…
Voi dovrete fare
Da madre a Santa,
Ch’io le avea giurato
Di condurla all’altare.
母さん
このワインは強いね。それに
今日は(飲んだ)グラスが多すぎたようだ
飲んだ …
ちょっと外に出て行くよ
でもその前に
ご加護をくれないか
あの日のように
兵士として出た(あの日)
そして…母さん…聞いてくれ…
もし俺が…戻ってこなかったら…
なっておくれよ
サンタの母親に
俺は誓ったんだ
彼女を(結婚の)祭壇に導くと
【解説】「サンタの母になるように頼む」のは原作にはない
原作ではトゥリッドゥは、ローラと復縁するために利用したサントゥッツァには何も言わずに、そのまま決闘に行き死にます。「母さん聞いてくれ」から下はオペラだけの台詞です。
サンタを煩わしいと追い払った女性に、母親になるように頼むとは
Voi dovrete fare da madre a Santaサンタの母親になってくれ
この歌を聞くとぞっとします。オペラ「カヴァレリア・ルスティカーナ」の中で、トゥリッドゥの母親はサントゥッツァに対して同情心がなく「煩わしい、面倒を持ち込む子」としてしか対応していないのですから。息子が完全に悪いのに。
トゥリッドゥに対しては良い母親であっても、トゥリッドゥが見ていない場面で善良な人間かは別の話です。
トゥリッドゥの死は自業自得ですが(村の人が知っているのだから、いつかローラの夫に不倫がばれた)不倫の発覚を早めたサントゥッツァを許すことが出来るかと言えば、トゥリッドゥの母には出来ないでしょう。
トゥリッドゥの母がサントゥッツァの母となり、もしふたりで暮らすことになれば、息子を死に至らしめた仇だと思って、いびり倒す未来しか見えない。