プッチーニのオペラ「トゥーランドット」を見ていると、疑問がわいてきませんか?
・カラフの国が滅んだ理由は?
・放浪の旅はどのようなものだったのか?
・異国の王子たちが次々と求婚に訪れたのはなぜ?
・ローリン姫とは?
・トゥーランドットが結婚を嫌がる理由は?
・姫の謎はなぜ3つ?
・結婚した二人のその後は?
すべての答えが「千一日物語」の「カラフ王子と中国の王女の物語」でわかります。
原作からわかる理由は以下の通り。
・異国に攻められ、同盟を組んだ国に裏切られたから。
・強盗に襲われるが、幸運に恵まれる旅。
・姫の肖像画を描いた絵師が、訪れた他の国々で姫の美しさを吹聴したから。
・原作にローリン姫は存在しない。
・結婚したくない理由は、宮中で自由に暮らしたいから。
・謎の数は決まっていなかった。カラフが謎を解いてしまい、姫の用意した謎が3つだっただけ。姫は翌日に問題を出そうとしたが、王に「それはだめだ」と言われた。
・結婚後、中国軍や旅で得た味方の国の協力でカラフは自分の国を取り戻した。二人は中国を離れ、カラフの国で過ごした。
「カラフと中国の王女の物語」は、トゥーランドットの元となっている作品なので、物語の情報量が多く、読み応えがあります。読んでいて興味深いなと思ったのは、下のことが描写されている点。
カラフ…コーランに精通した男
トゥーランドット…仏教徒
異教徒同士の結婚(異宗婚)だと書かれています。物語とはいえ、実際にふたりで生活してどうだったんだろう、と考えると面白いですね。
フランス語で読むならこちらから。Les Mille et Un Jours
上記サイトの125頁のHISTOIRE DU PRINCE CALAF ET DE LA PRINCESSE DE LA CHINE.のところから読むことができます。(125から202)
トゥーランドットの原作「千一日物語」
プッチーニの「トゥーランドット」は、ゴッツィの同名の戯曲を元に作られており、さらに戯曲の元となったのが、「千一日物語」の中の「カラフ王子と中国の王女の物語」です。
「千一日物語」の作者は、フランソワ・ペティ・ド・ラ・クロワです。
プッチーニの作品だけ異なっているポイントは、「リュー」というキャラクターが加わったことです。プッチーニ好みの、けなげな女性です。
「千一夜物語」と「千一日物語」は、別の物です。「千一夜物語」は、千夜一夜物語、アラビアンナイト、とも呼ばれています。
千一日物語「カラフ王子と中国の王女の物語」のあらすじ
カラフ、カラフ父が治める国に、巨大な隣国から「貢ぎ物を毎年渡せ、さもなくば大軍を率いて奪い取る」と要求が来た。貢ぎ物を渡すか、脅しを拒否するかの話し合いが行われ、拒否することになった。
カラフたちは近隣の民族に使者を送り、互いに団結することを依頼した。カラフたちは同盟国を得て、戦いの準備を始めた。戦いが始まる。同盟国の裏切りにより、カラフは苦境に立たされ、敗北。
カラフ父のいる王宮に戻ると、さらに悪い知らせが入る。巨大な国はカラフの国に大軍で攻めてくることがわかった。宮中の高価な物をかかえて、カラフの両親、カラフ王子、王族、兵士は、国を捨てて逃げることにした。
カラフ親子、放浪の旅に出る
彼らはどこかの国に保護を求めるつもりで、大集団で移動していた。だが、山中で盗賊に襲われ、一緒に逃げていた者たちは死に、宝物はすべて奪われた。生き残ったのは、カラフ父、カラフ母、カラフの3人だけ。
別の領地にたどり着く。カラフは物乞いをしたり、仕事を探すが見つからない。カラフが木の下で眠り目覚めると、目の前に宝石をつけた美しい鷹がいた。カラフはその鷹を捕まえた。鷹は、前日にこの領地の王子から逃げ出したものだった。鷹を届けると鷹の王子に喜ばれ、3つの願いを聞こうと言われた。カラフは両親の面倒と、馬や剣、金貨の詰まった財布を求めた。次の日に、カラフは立派な服を着て、剣や財布をもらい、立派な馬に乗った。
中国に行ってみたい。
カラフは両親を鷹の王子の国に残し、ひとりで中国を目指す。
カラフ、中国にたどり着く
北京に到着。カラフが家の門を叩き、泊めてもらえるか交渉すると、老女に気に入られて歓迎される。カラフは中国がどのような国なのかを聞く。
中国の国王は善良で魅力的な方です。ただ、男児に恵まれません。祈りを捧げても、男児ができないのです。そのような王の人生を邪魔しているのが、彼の一人娘であるトゥーランドット王女です。
なぜ彼女が彼を苦しめるのですか?
トゥーランドット王女は、美しく聡明な女性です。彼女を描いた画家は彼女の美しさを表現できないと嘆きます。また、数種類の言語、科学、法律、地理、哲学を学んでいるそうです。ただ、冷酷な面があります。結婚を拒否するあまり、王女は国王に勅令を出すことを願いました。
「私が出す質問に答えられたら、結婚に同意する。謎を解けなければ、処刑する。」
嘆かわしいことに、次々と異国の王子が求婚に来てしまったのです。彼らは命を失っています。今夜もまた王子が死にます。
夜になると、ドラムの音が聞こえてきた。老女が言うには、処刑の音だと言う。カラフは処刑を見に行く。王子の死を見届ける。カラフは野次馬の中に、涙を流す男を見つけて声をかける。彼は死刑になった王子の指導教師だった。
サマルカンドの王子は、幸せに暮らしておりました。ある時、有名な画家がやってきました。画家は王子に中国の王女の絵を見せました。王子は一目ぼれして、中国まで来たのです。そして謎解きに失敗しました。これが私の王子の不幸の原因です。
彼は中国の王女の肖像画を地面に捨て、指導教師は立ち去る。カラフは絵を拾う。カラフは肖像画を見てから、求婚の決心をする。老女はその決断を聞いて悲しむ。
私は中国の国王に自分の能力を捧げるために来ました。ですが、軍隊の将校になるよりも、彼の婿になるのがよいでしょう。
カラフは王宮に向かう。王がカラフと接見した。王は謎解きへの挑戦をやめるように諭して、明日に決断を言いに来るように伝えた。カラフは老女の家に戻った。
中国の王女、現れる
翌日、カラフは王宮を訪れる。王が説得するが、カラフの決断は変わらない。王女が現れる。
なぜ王宮で自由気ままに暮らさせてくれないのか?求婚をやめてほしい。
謎を出してください。解いてみせます。
謎1 どの国の人にも、誰にでも友好的なのに、仲間を思いやることができない生き物は?
謎2 子供を産んだ後、成長した子供を食べる母親は?
謎3 葉の片方が白く、もう片方が黒い木は?
答え 1.太陽 2.海 3.木は一年を表している。昼と夜で構成されている。
カラフが3つの謎に答える。
まだ謎はあります。明日まで待って下さい。
王は「それはだめだ。謎を解いたのだから、結婚するべきだ」と言い、謎解きは終わりになる。
王女が絶望しているようなので、権利を放棄してもいいです。ただし、王女が私の出す質問を解いて下さい。
中国の王女は、条件を受け入れる。
苦難にあったが、今は喜びや名誉にいる王子の名前は?
今は答えることができませんが、明日、王子の名前を言うことを約束しましょう。
その場は解散になる。中国の王女は、自室に戻り絶望している。
あの男に少し好感を持ったが、やはり結婚したくない。私は彼の名前を知ることはできないだろう。
中国の王とカラフは、謎解きの成功を喜び合う。
トゥーランドットの侍女(奴隷)が、カラフの部屋に
esclaveと書かれているので侍女というより奴隷です。ただ、奴隷だと言葉が強すぎるような気がしたので他の似たような意味を持つ女官や召使等から侍女を選びました。
夜、カラフは宮殿内に用意された自室に戻る。部屋の中に、なぜか若い女性が待っていた。
私は、中国の王から貢ぎ物を要求された部族の娘です。父は戦いを選び、中国が勝ちました。父は亡くなる前に、妻子が奴隷になるのを避けるために殺害を指示しました。私は母や妹と一緒に川に投げ込まれました。私はその生き残りで、王宮に連れられ姫の侍女になったのです。このような出自を言うのは、あなたに信頼してもらうためです。
私はあなたに重要なことをお知らせします。姫があなたの殺害を狙っています。一緒に逃亡しましょう。
カラフは答える。
感謝します。ですが、このまま去ると中国の王に対して無礼になるので、断ります。それに彼女を愛しているのです。彼女が私の死を望むのなら、仕方がないでしょう。
侍女は諦めて、部屋を出た。カラフは眠れぬ夜を過ごした。
王女はカラフの名前を答える
カラフは暗殺を警戒するが、何も起こらない。広間に多くの者が集まる中、カラフが「王子の名前は?」と姫に問いかける。
王子の名前は、カラフ。
カラフは何も言わずに倒れた。
私はあなたを拒否することができます。ですが、あなたの長所が私を導いてくれました。私はあなたを夫とします。
人々が祝福する。みんながカラフの名前を知った方法を聞きたがった。
私の侍女が夜に彼の部屋を訪れ、名前を聞き出したからです。
カラフはトゥーランドットの側にいる昨夜の侍女を見る。
私はカラフ王子の名前を聞くために彼の部屋に行ったのではありません。私は彼と一緒に逃亡するつもりで、部屋を訪れました。私は姫が暗殺を考えていると言い説得しましたが、断られました。そのときに、彼が自分の名前をもらすのを聞きました。
私が姫に彼の名前を教えた理由は、教えれば姫は彼の名前を言い、ふたりは結婚しないと思ったからです。ですが姫が結婚を選び、無駄になりました。
侍女は短剣を胸に刺した。
なぜ私に心を開かなかったの?私とカラフが結婚するなら、人生を捨てると言わなかったの?
私の運命を憐れまないで下さい。
侍女が死ぬ。中国の王は侍女のために立派な葬儀を行った。
結婚後、カラフは自国を取り戻した
結婚式。カラフの両親も呼び寄せられた。以前出会った、鷹の王子も来た。
自国を取り戻すため、カラフは中国や鷹の王子の協力を得る。中国軍の協力により、かつてカラフの国に貢ぎ物を要求した大国を滅ぼし、カラフは大国の王になった。自国を取り戻し、同盟関係を破った国にも行き、滅ぼした。
カラフとトゥーランドットは、二人の息子をもうけた。ひとりは中国の王子に、ひとりはカラフの跡継ぎとなった。