アイーダは、1869年のスエズ運河開通を記念して建設されたエジプトのカイロ歌劇場のために書かれたオペラです。劇場の開幕式までに作品を完成させることができず、1871年12月にカイロ劇場で初演されました。アイーダの見どころのひとつである有名な凱旋行進曲は、第2幕で演奏されます。
アイーダ、オペラ:人物相関図
アイーダ、オペラ:登場人物
アイーダ, Aida | 奴隷(エチオピアの王女) | ソプラノ |
アムネリス, Amneris | エジプトの王女 | メゾソプラノ |
ラダメス, Radamès | エジプトの将軍 | テノール |
アモナスロ, Amonasro | 捕虜(エチオピアの王) | バリトン |
ランフィス, Ramfis | エジプトの神官 | バス |
エジプト国王, Il Re d’Egitto | バス |
- 原題:Aida
- 言語:イタリア語
- 作曲:ジュゼッペ・ヴェルディ
- 台本:アントニオ・ギスランツォーニ
- 原作:オギュスト・マリエット・ベイ原案、カミーユ・デュ・ロークル
- 初演:1871年12月24日 カイロ歌劇場
- 上演時間:2時間25分(第1幕40分 第2幕45分 第3幕30分 第4幕30分)
アイーダ、オペラ:簡単なあらすじ
エチオピア人の奴隷アイーダとエジプト人の将軍ラダメスは、密かに愛を育んでいる。エジプト王女アムネリスはラダメスに恋しており、二人の関係を疑っている。アイーダはエチオピアの王女であることを隠している。
彼が私以外の女と恋仲になることは許さない!
エジプトはエチオピアとの戦いに臨む。ラダメスはその司令官となる。
エチオピアは敗北する。エジプト軍は華々しく凱旋パレードを行う。アイーダの父はエジプトで捕虜になる。 エジプト王は、アムネリスとラダメスの結婚を発表する。アイーダは父の命令で、ラダメスから軍事機密を手に入れる。
私と一緒に逃げてください。私たちはどの道を通って逃げればいいの?武装した兵士があちこちにいるのでしょう?
ナパタの谷は明日まで無人になる。
ラダメスの国への裏切りが露呈する。神官たちの裁判の結果、ラダメスは死刑になる。アイーダはラダメスの処刑を予期して、墓の中で待つ。アイーダとラダメスは死ぬ。
アイーダ、オペラ:解説
アイーダの舞台は、古代エジプト。オギュスト・マリエット・ベイという、古代エジプト学者のアイデアがもとになっていますが、史実に基づいていないので、歴史ファンタジーとしてみるのがよいです。
アイーダは、史実に基づいていないので、古代エジプトの最大領土と、アクスム王国(エチオピア)の最大領土を合わせた、イメージ地図です。
古代エジプト アムネリス、ラダメス、エジプト国王
アクスム王国(エチオピア) アイーダ、アイーダ父(エチオピア国王)
メンフィス 王宮、火の神の神殿 (第1幕、第4幕)
テーベ 城門、アムネリスの部屋 (第2幕)
ナイル川 アイーダがラダメスを待っている場所(第3幕)
ナパタ ナパタの渓谷 ラダメスが「今なら、ナパタの渓谷は、兵士がいなくて無人(この情報は、軍事機密)だから、そこを通って逃げよう」とアイーダに言った場所(第3幕)
アイーダ、オペラ:第1幕のあらすじ
第1場
メンフィスにある、王宮の広間
ラダメスとエジプトの司祭長がいる。
エジプトの祭司長(ランフィス)
エチオピアがこちらに攻めてくるようだ。イシスの女神がエジプト軍の司令官を選ぶだろう。
選ばれた者は幸運だ。
エジプトの祭司長(ランフィス)
彼は若くて勇敢な者に違いない。
エジプトの司祭長が去る。
エジプト軍の司令官に選ばれたら、功績を挙げてアイーダを嫁にしよう。
清らかなアイーダ。王家の冠をあなたの髪に乗せたい。太陽の玉座に座らせたい。
「清きアイーダ」Celeste Aida
アムネリスが現れる。
あなたのまなざしには喜びが見えるわ。あなたの心をときめかすのは、どんな美しい女性かしら?
「二重唱」Quale insolita gioia
私が司令官に選ばれる幸運な夢を見ていました。
もっと甘い夢をみていたのではないですか?
私がですか?(しまった。アイーダとの秘めた恋がばれてしまう。)
(彼が私以外の女を好きならば、許さない!)
悲しげなアイーダが来る。ラダメスは彼女を見て動揺する。
(彼が動揺している!彼女がライバルなの?)
こちらにおいで。アイーダよ、私はあなたを妹のように思っているのよ。涙の訳を教えて。
(この女奴隷め!)
「三重唱」Vieni, o diletta, appressati
私はエチオピア人なので、これからエジプトと戦う祖国を思って泣いているのです。
(祖国だけが私を悲しませるわけではない。不幸な私の恋を悲しく思う。)
(アムネリスは怒りと疑念がある。秘密の恋がばれたら、大変だ。)
エジプト国王と兵士らがくる。
エジプト国王
国境からの使者が到着した。
使者
エチオピア人がエジプトに侵略しました。すでにテーベまで来ています。エチオピアを率いているのは、アモナスロです。
エジプト国王
彼はエチオピアの王だ!
(私の父!)
エジプト国王
イシスの女神は司令官をラダメスに選んでいる。
神々に感謝を。
彼が司令官に選ばれた!
(私の父と彼が戦うことになってしまった。)
エジプト国王
ラダメスよ、勝利を祈るために神殿に行きなさい。
勝ちて帰れ!
人々
勝ちて帰れ!
人々が戦いの準備に立ち去る。
勝ちて帰れ!私の口から忌まわしい言葉が出てしまった。ラダメスと父が戦ってしまう。不吉な愛が私に死をもたらすだろう。
「勝ちて帰れ」Ritorna vincitor
第2場
火の神の神殿
エジプトの祭司長と巫女たちが祭祀を行う。
巫女たち
全能なる神よ、命を与える神よ。私たちは祈りを捧げる。
「全能なる神よ」Immenso, immenso Fthà, del mondo
ラダメスが祭壇の前で剣を受け取る。
エジプトを守りたまえ。
アイーダ、オペラ:第2幕のあらすじ
第1場
テーベのアムネリスの部屋
エジプト軍は勝利した。凱旋祝賀式に出席するため、アムネリスは多くの侍女を従えて、身なりを整える。
(彼女を見ていると、忌々しい疑念がわく。)
アイーダ、お前の国のことは、気の毒だったわね。でも、隠し事をやめなさい。故郷とエジプトが戦うことで苦しんだはずよ。運命はある者に残酷でした。ラダメスが戦いで死んだ。
「二重唱」Fu la sorte dell’armi a’tuoi funesta
私は永遠に悲しみます。
お前はやはり彼を愛している!彼は生きている。ファラオの娘である私がお前の恋敵だ。
恋敵!あなたがそう言うなら、私はあなたの恋敵なのでしょうね!ああ、私はなんてことを言ってしまった。あなたは幸福で強大です。私には愛しかありません。
私とともに式典に参加しろ。本当に私と戦うことができるのかを思い知れ!
第2場
テーベの城門前
エジプト国王、アムネリスが現れる。
人々
エジプトに栄光あれ、イシスの神に栄光あれ。聖なる土地を守る神に、デルタを統べる王に、栄光あれ!
「凱旋行進曲」Gloria all’Egitto, ad Iside
女たち
蓮と月桂樹を勝利者の髪に飾りましょう。花を武器に散らせましょう。エジプトの娘たちは神秘の舞を踊るのです。
アイーダ・トランペット(ファンファーレ・トランペット)が登場します。通常のトランペットは、ホースを丸めたように主管が巻かれていますが、アイーダ・トランペットは主管がまっすぐになっています。
エジプト軍が行進する。ラダメスが現れる。
エジプト国王
お前に褒美を与える。お前の望みは何でも叶えよう。
まずは、あなたの前に囚人をお連れすることをお許しください。
エチオピアの捕虜が連れられてくる。
私の父がいる!
「あの方は、私の父」Che veggo!… Egli!… Mio padre!
(アイーダに)私の身分を明かしてはいけない。
私は彼女の父です。私が着ている兵士の服からわかるように、国や王のために戦いました。国への愛が犯罪なら、私たちは罪人です。死ぬ覚悟はできています。しかし、王よ。慈悲深くあってほしい。今日は我々が運命に負けましたが、明日はあなた方がその道をたどるのかもしれないのです。
捕虜ら
あなたに憐れみを求めます。我々の苦しみが、あなたに与えられませんように。
エジプトの祭司長(ランフィス)
王よ、彼らの声に耳を傾けてはいけません。彼らは残虐です。神々は彼らに死をもたらしたのです。すでに神によって決まったことです。
王よ、あなたに憐れみを求めます。
(悲しむ彼女の顔は美しい。)
(彼が彼女を見ている。)
王よ、あなたは私の望みを叶えると言いました。私はエチオピアの囚人のために、彼らの命と自由を求めます。
人々
祖国の敵に死を与えよ!
エジプトの祭司長(ランフィス)
王よ、ラダメスよ。彼らは復讐心を持った敵である。彼らは再び武器を手にするだろう。
エチオピアの王は死んだ。彼らに希望はない。
エジプトの祭司長(ランフィス)
あなたがそこまで言うのなら、アイーダの父をエジプトに残しなさい。
エジプト国王
祭司長よ、私はお前の助言に従う。
ラダメスよ、アムネリスを褒美として与える。アムネリスとラダメスは結婚しなさい。お前たちが国を治めなさい。
(女奴隷よ、私の愛を奪ってみろ。)
(彼は栄光と玉座をもつ。私は忘却と涙しかない。)
(落雷が私に落ちた。エジプトの玉座は彼女の心より価値はない。)
(予期せぬ喜びに酔っている。)
しっかりしろ、アイーダ。故郷に喜びをもたらせ。復讐の時は近い。
人々
エジプトに栄光あれ。イシスの神に栄光あれ。
アイーダ、オペラ:第3幕のあらすじ
ナイル川のほとり
月の輝く夜、ナイル川から一隻の船が来る。
巫女たち
オシリスの母にして妻たる方よ、女神よ。哀れな私たちをお救い下さい。
エジプトの祭司長(ランフィス)
アムネリス、神殿に行き、婚礼の祈りを捧げなさい。
はい。私が愛するように、ラダメスも私を愛してくれることを祈ります。
彼らは神殿に入る。アイーダが現れる。
ラダメスがもうすぐここに来る。
懐かしの故郷よ。もう二度と戻ることはないでしょう。
「おお、わが故郷」O patria mia
アイーダの父が現れる。
私はお前たち3人の関係を理解した。お前が望めば、彼女に勝つ方法がある。お前は祖国と玉座を手に入れられる。
香る森林、涼しい谷間、金色の神殿をを思い出せ。
「二重唱」Rivedrai le foreste imbalsamate
香る森林、涼しい谷間、金色の神殿を思い出す。
忘れるな!エジプトが先に侵略してきたのだ。我が国は戦う準備ができた。だが、敵が通る道を知らなければならない。
ラダメスから、エジプト軍の軍事機密を聞き出せ。祖国のためだ。
アイーダ父は木陰に隠れる。ラダメスが現れる。
やっとあなたに会えた、愛しいアイーダ。
「二重唱」Pur ti riveggo, mia dolce Aida
お帰り下さい。あなたは彼女との結婚があるでしょう。
何を言うのか?あなたを愛している。次に戦があれば、また軍功を立てて、私たちの結婚を認めてもらおう。
もし愛しているなら、一緒にここから逃げて欲しい。
あなたは私に祖国や信仰を捨てろと言うのか?
あなたは私を愛していない。さようなら。
待ってくれ。わかった。一緒に逃げよう。
どの道を通って、私たちは逃げたらいいのかしら?武装した兵たちがたくさんいるでしょう?
ナパタの渓谷は敵へ攻撃するために、明日まで無人だ。
アイーダの父が木陰から現れる。
ナパタの渓谷!そこに我がエチオピアの軍勢を送り込もう!私はエチオピアの王である。
お前がアモナスロなのか?私は名誉を失った!国を裏切った!
落ち着いて!
アムネリスが、神殿から祭司長や衛兵らを引き連れてくる。
裏切り者!!
私の恋敵!
アイーダ父がアムネリスに短剣で襲いかかる。ラダメスはアイーダ父を止める。ラダメスは、アイーダ、アイーダの父を逃がしてから、自ら捕まる。
アイーダ、オペラ:第4幕のあらすじ
第1場
メンフィスにある、王宮の広間
地下牢に通じる扉の前にアムネリスはいる。
憎い恋敵は去った。彼は祭司による裁きを待っている。彼は国を裏切った。軍事機密を明かして、彼女とともに国を離れようとした。私はそれでも彼を愛している。彼を救いたい。衛兵よ、ラダメスをここへ連れてきて。
「憎い恋敵は逃げていった」L’aborrita rivale a me sfuggia
ラダメスが来る。
あなたの運命を決める祭司たちが集まってます。恐ろしい事態にもかかわらず、彼らはあなたに弁明の機会を与えます。弁明してください。私も援護します。
「二重唱」Già i Sacerdoti adunansi
私の弁明が聞き入れられることはないだろう。軽はずみに情報を漏らしたのは事実です。死ぬ覚悟はできています。
私のために生きてください。
あなたが私から彼女を奪い、死なせた。
彼女は生きています。死んだのは彼女の父だけです。
彼女のために私が死ぬことを知らないでいてほしい。
ラダメスは地下牢に戻る。祭司たちが地下に降りる。
誰が彼を救うの?私が祭司たちに彼の裏切りを知らせてしまった。
裁判の様子が聞こえてくる。
エジプトの祭司長、祭司らの声
神の御霊よ、私たちの下に降りてきてください。私たちの唇により、あなたの正義を行います。
「神の御霊よ」Spirto del Nume
ああ、お慈悲を。
エジプトの祭司長(ランフィス)の声
弁明しないのだな?お前は、国に王に名誉に背いた。お前の運命は決まった。お前は悪名高い者として死ぬ。怒れる神の神殿の下に、生きたまま入れ。
祭司たちが地下から出てくる。
彼は私が愛している人だ。こんなことが許されるの?
エジプトの祭司長(ランフィス)
彼は裏切り者である。彼には死刑がふさわしい。
第2場
火の神の神殿、ラダメスの墓の中
ラダメスが墓に入る。司祭たちが石の扉を閉める。
死の石が閉じられた。アイーダは無事だろうか?
暗がりからアイーダが出てくる。
あなたより先に墓の中に入り、あなたを待っていました。
アイーダとラダメス
大地よ、涙の谷よ、さようなら。喜びの夢は消えた。天が私たちに開かれている。
「二重唱」O terra, addio; addio, valle di pianti
喪服姿のアムネリスは、ラダメスの墓の上で祈る。
あなたに平和がありますように。神があなたを天国に導きますように。
「あなたに平和がありますように」Pace t’imploro