ドン・ジョヴァンニ 第2幕
ツェルリーナはジョヴァンニの「ふたりきりになろう」という誘いに乗り、自分の婚約者のマゼットを追い払います。ツェルリーナがジョヴァンニの誘惑を受け入れたときに、エルヴィラによって、ジョヴァンニが遊び人であることを知り、一応誘惑を退けました。
その後、マゼットが「僕を捨てた。ジョヴァンニと一緒にいただろう。」と怒っているところを、ツェルリーナがなだめて仲直りしましょうと歌うアリアが「ぶってよ、マゼット」です。
「ぶってよ、マゼット」Batti, batti, o bel Masetto【歌詞と対訳】
Batti, batti, o bel Masetto,
La tua povera Zerlina;
Starò qui come agnellina
Le tue botte ad aspettar.
Lascerò straziarmi il crine,
Lascerò cavarmi gli occhi,
E le care tue manine
Lieta poi saprò baciar.
Ah, lo vedo, non hai core!
Pace, pace, o vita mia,
In contento ed allegria
Notte e dì vogliam passar,
Sì, notte e dì vogliam passar.
ぶって、ぶって、大好きなマゼット
あなたのかわいそうなツェルリーナを
私は子羊みたいにここにいるの
あなたにぶたれるのを待っているわ
髪を引き抜いてもいいの
目をくりぬいてもかまわない
それでも、あなたの愛しい小さな手に
あとで喜んでキスしてあげるわ。
ああ、なるほど、勇気がないのね!
仲直りよ、仲直りしてね。私の愛しい人
幸せで陽気に
夜も昼も過ごしたいでしょう。
そうよ、夜も昼も私たちは過ごしたいのよ。
【解説】マゼットの手は、「manine」赤ちゃんの手?
manine 小さな手
小さな手のイメージは、ただの小さな手ではななくて、赤ちゃんや子供の手です。
「髪を引き抜いていいよ」「目をくりぬいてもいいのよ」と過激な言葉選びつつも、その行為をするマゼットの手は赤ちゃんの手「manine」と言ってしまうのは、面白くて策略的です。
マゼットが怒っていても「ぶってよ、マゼット」を聞いていると、戦意喪失してしまったのに納得できます。ツェルリーナは、かなりの恋愛上手ですよね。