「カヴァレリア・ルスティカーナ」は、ヴェリズモ・オペラ(現実主義の題材を使ったオペラ)の代表作です。マスカーニは、こちらの作品でオペラのコンクールで優勝し、世に名前が広まりました。ですが、以降はこの作品以上のオペラを作ることが出来ず、作曲家よりも指揮者として名声を得ます。マスカーニは、ミラノ・スカラ座の首席指揮者に就任しています。「カヴァレリア・ルスティカーナ」の見どころは、間奏曲です。
カヴァレリア・ルスティカーナ、オペラ:人物相関図
カヴァレリア・ルスティカーナ、オペラ:登場人物
サントゥッツァ | 村娘 | ソプラノ |
トゥリッドゥ | 居酒屋の息子 | テノール |
アルフィオ | 裕福な馬車屋 | バリトン |
ローラ | アルフィオの妻、トゥリッドゥの昔の婚約者 | メゾソプラノ |
ルチア | トゥリッドゥの母 | アルト |
- 原題:Cavalleria rusticana
- 言語:イタリア語
- 作曲:ピエトロ・マスカーニ
- 台本:ジョヴァンニ・タルジョーニ=トッツェッティ、グィード・メナッシ
- 原作:ジョヴァンニ・ヴェルガの短編小説「カヴァレリア・ルスティカーナ」
- 初演:1890年5月17日 ローマ コスタンツィ劇場
- 上演時間:1時間10分
カヴァレリア・ルスティカーナ、オペラ:簡単なあらすじ
本編前の出来事
トゥリッドゥとローラは婚約していた。彼が兵役中にローラは別の男と結婚した。トゥリッドゥは腹いせにサントゥッツァと恋仲になる。
オペラ
トゥリッドゥとローラは不倫していた。サントゥッツァはトゥリッドゥとよりを戻したいと願うが、トゥリッドゥは冷たく拒絶する。
私を見捨てるつもり?後悔することになるわよ。
あっちへ行け。お前が怒ろうが気にしない。
サントゥッツァはローラの夫であるアルフィオに二人の不倫を暴露する。トゥリッドゥとアルフィオの決闘。トゥリッドゥの死。
カヴァレリア・ルスティカーナ、オペラ:全1幕のあらすじ
シチリア島の村の広場
トゥリッドゥの歌声
色白なローラよ、お前が微笑めば、俺は幸せ。殺されたってかまいやしない。天国だってお前がいなきゃ、俺は行かない。
復活祭の日。広場に面して、片側には教会、もう片方には居酒屋(トゥリッドゥの母の店)がある。トゥリッドゥの恋人、サントゥッツァと、トゥリッドゥの母が現れる。ふたりは居酒屋に向かいながら話している。
トゥリッドゥがどこにいるか教えてください。
トゥリッドゥの母
知らないよ。煩わしいことには関わりたくないんでね。隣の町に葡萄酒を仕入れに行ったんだろ。
違うわ。昨夜この村で彼を見かけた人がいたわ。
トゥリッドゥの母
なんだって。もし家に帰っていないとしたら…
馬車の鞭と音と共に、ローラの夫(トゥリッドゥの不倫相手の女の夫)がやってくる。
ローラの夫
馬は足を鳴らし、鞭の音。さあ、行くぞ。雨や雪や冷たい風でも、問題ない。家ではローラが待っている。俺を愛し、慰めてくれて、誠実な女さ。よお、おふたりさん。いつもの葡萄酒はあるかい?
トゥリッドゥの母
息子が隣町まで仕入れに行ってるよ。
ローラの夫
いや、彼はずっとこの町にいるよ。今朝、自分の家の近くで見たから。
話そうとするトゥリッドゥの母を、サントゥッツァは止める。ふたりの様子には気がつかず、ローラの夫は、教会に行く。
トゥリッドゥの母
なんで会話を止めたんだい?
お母さんもご存じのように、トゥリッドゥとローラは、結婚を誓う関係でした。
彼が兵役から戻ると、ローラは別の男性と結婚していたのです。失恋の傷を新しい恋、私との恋で癒やしました。
ですが、ローラは夫に隠れて、トゥリッドゥをまた愛し始めました。私は名誉と貞操を失ったのです。
「ママも知るとおり」Voi lo sapete, o mamma
「ママも知るとおり」Voi lo sapete, o mamma|カヴァレリア・ルスティカーナ
トゥリッドゥの母
聖なる日に、なんて嫌なことを知らせにきたんだい。ああ、嫌だ、憐れな私たちだこと!私は、教会に行くよ。
トゥリッドゥの母は、教会に出かけていった。村の広場にはサントゥッツァがひとりになり、トゥリッドゥが現れる。
ここにいたのか。サントゥッツァ。
あなたがローラの家の近くにいるのを見た人がいるわ。ローラの夫が話していたのよ。
それが、お前を愛してやった、お返しってわけか。俺があいつに殺されたっていいってことだな。
女は、浮気を責め、男は、逆ギレ。ご機嫌な様子で、ローラがやって来る。
ローラ
(歌声)アイリスの花よ、美しい天使は天国に千人いるけれど、彼のようにハンサムな人はひとりだけ。
トゥリッドゥ、私の夫は通ったかしら?ふたりは、こんなところでミサを聞くの?
私は行かないわ。ミサには罪のないものだけが行くべきよ。
ローラ
そう、神に感謝して、私は行くわよ?
ローラ、教会に行こう。ここにいたって仕方がない。
待ちなさい!トゥリッドゥ、私はあなたに話があるのよ!
ローラはサントゥッツァをあざ笑いながら、教会に入っていく。
俺に恥をかかせたな!!
トゥリッドゥは激怒し、サントゥッツァにつかみかかろうとする。
私を捨てる気なの?泣いて頼んでもダメなの?覚えてなさいよ。
向こうへ行け。お前が怒ろうが、どうでもいいさ。
トゥリッドゥはサントゥッツァを地面に叩きつけて、ひとりで教会に入っていく。残されたサントゥッツァの近くを、ローラの夫が通りかかる。
ローラの夫
教会の様子はどうだい?
(神様が私のために、ローラの夫を寄こしてくれたんだわ。)
ミサはほとんど終わりよ。あなたのために一言。ローラは、トゥリッドゥと一緒にいるわよ。今日だけでなく、あなたが仕事で家を離れているとき、ふたりはいつも一緒よ。
ローラの夫
嘘だったら承知しないぞ。
ローラの夫は最初は半信半疑だが、サントゥッツァの言葉を信じる。
ローラの夫
なんて恥知らずなやつらなんだ。今日中に復讐をしてやる。
激怒して去って行く。
カヴァレリア・ルスティカーナ、オペラ:間奏曲
教会の前
ミサが終わり、教会から人が出てくる。トゥリッドゥは、わざと他人行儀にローラに声をかける。
ローラさん。もう帰ってしまうんですか。
ここに居合わせたのだから、皆さんと乾杯しようじゃないか。
光るグラス、泡立つ葡萄酒、陽気に飲もう!
(ローラに向かい)あなたの愛のために。
「乾杯の歌」Viva il vino spumeggiante
ローラ
(トゥリッドゥに)あなたの幸運を祈って!
「乾杯の歌」Viva il vino spumeggiante|カヴァレリア・ルスティカーナ
酒に酔う人たちの中に、ローラの夫が現れ、トゥリッドゥに近づく。トゥリッドゥは彼に酒を渡そうとするが、受取を拒否される。
ローラの夫
あんたの酒は、飲んだら毒になるからいらないよ。
トゥリッドゥは、酒を地面に捨てる。ふたりの様子を不安そうに見ているローラ。村の女たちにこの場を離れるように促される。
村の女たち
ローラ、あなたはここにいないほうがいいわ。
トゥリッドゥがローラの夫の耳を噛む。(シチリアの決闘の作法)ふたりは、決闘をすることになる。
ローラの夫
ひどく噛みやがったな。お前の本心がわかったぜ。
俺のほうが間違っているのはわかっているさ。でも、俺が死ねば、かわいそうなサントゥッツァが一人残るんだ。だから、俺は、あんたの命を狙う。
ローラの夫
好きなようにやればいい。裏の葡萄畑で待っている。
ローラの夫は立ち去り、トゥリッドゥは、自分の母を呼び話しかける。
母さん。この葡萄酒は強いね。もし、俺が帰らなかったら、サントゥッツァの母親になってくれ。俺、彼女と結婚すると誓っていたんだ。
「母さん、あの酒は強いね」Mamma,Quel vino è generoso
「母さん、あの酒は強いね」Mamma,Quel vino è generoso|カヴァレリア・ルスティカーナ
母親は、なぜ急にそんなことを言うのか不思議がるが、トゥリッドゥは出て行く。トゥリッドゥの母は、何もわからずに混乱し、サントゥッツァが現れ、ふたりで抱き合う。
村の女たち
トゥリッドゥが、殺された!
トゥリッドゥの母とサントゥッツァは、ショックのあまり意識を失う。
原作では、トゥリッドゥは決闘の末、サボテンの間を転がり回って死にます。