レハールのオペレッタ「微笑みの国」は初心者でも気軽に楽しみやすい作品です。微笑みの国の舞台は、前半はオーストリアのウィーン、後半は中国です。微笑みの国の見どころは「君は我が心のすべて」Dein ist mein ganzes Herz です。
微笑みの国、オペレッタ:人物相関図
微笑みの国、オペレッタ:登場人物
リーザ | 伯爵の令嬢 | ソプラノ |
スー・チョン殿下 | 中国の外交官 | テノール |
グスタフ・フォン・ポッテンシュタイン伯爵 | 中尉、伯爵 | バリトン |
ミー | スー・チョンの妹 | ソプラノ |
チャン | スー・チョンの伯父 | バリトン |
フェルディナント・リヒテンフェルス伯爵 | リーザの父 | 台詞のみ |
- 原題:Das Land des Lächelns
- 言語:ドイツ語
- 作曲:フランツ・レハール
- 台本:ルートヴィッヒ・ヘルツァー、フリッツ・レナー=ペダ
- 原作:レハールのオペレッタ「黄色い上着」からの改作
- 初演:1929年10月10日 ベルリン メトロポール劇場
- 上演時間:2時間
微笑みの国、オペレッタ:簡単なあらすじ
ウィーン
伯爵の娘リーザは、中国の王子スーチョンに夢中になっている。グスタフはリーザに恋していたが、リーザに振られてしまう。彼は彼女との友情を保つことにした。リーザと王子は結婚し、中国へ向かう。
中国
二人は中国での生活を始める。リーザは中国の風習になじめない。王子の叔父は、習慣に従って4人の中国女性と結婚することを勧める。王子は必要に迫られ、4人の女性と結婚することにする。グスタフはリーザに会うために中国に来た。リーザはグスタフと共にウィーンに戻る。
微笑みの国、オペレッタ:第1幕のあらすじ
ウィーンの伯爵邸の大広間
伯爵令嬢リーザが乗馬大会で優勝したので、人々が祝うために集まっている。
皆さんありがとう。勝利を確信していました。でも、もっと冒険をしたいのです。次の冒険は、本物の愛。特別な人が現れたら、夢中になりたいのです。もう身近にいるのかもしれません。
「恋をしてみたい」Gern, gern wär ich verliebt
グスタフ中尉がお祝いに駆けつけるが、リーザは軽くあしらう。スー・チョン殿下から、リーザに贈り物が届く。金の仏像だ。殿下からのリーザへの手紙には、仏陀の教えが書いてあった。グスタフ中尉は「金持ちの中国人じゃ敵わない」と、皆と一緒に晩餐に行ってしまう。
一人残ったリーザ。
「幸せが成功を呼ぶ」仏陀の教えね。なんて素敵。
リーザが殿下を思っていると、グスタフ中尉が戻ってくる。
素敵な歌だね。変わっている。
中国の恋の歌よ。
そうかい!中国の歌に仏像か!!
やきもちね。
いや、そんなことより、君に話すことが。軍からお金をもらったんだ。士官は結婚するのに保証金がいるからね。君に結婚を申し込むために。
ありがたいお話だけど、断るわ。あなたを好きなのよ。いい人だもの。
仕方がない。友達のままでいよう。(いつかは気が変わるかも。)
祝いの場に、スー・チョン殿下が訪問してくる。
(憧れのリーザ。彼女は、私の心の内は知らないだろう。中国人は、気持ちを外に見せない。いつも微笑み、苦しみは見せないのだ。私の気持ちを知るのは、私だけ。)
「常に微笑むのみ」Immer nur lächeln
リーザが現れる。二人でお茶を飲み語り合う。お互いに好きだが、思いは秘めている。
これは、中国の茶器ですね。中国の花だ。(まるで恋人のよう。)
二人でお茶と会話を楽しむひととき。(まるで恋人のよう。)
リーザの父が、スー・チョン殿下に顔合わせして欲しい女性たちを連れてくる。殿下に興味津々の女性たち「中国では女性をどんな風に口説くのですか?」
りんごの花で冠を編み、好きな女性の窓に置くのです。4月の月夜に。憧れを込めて歌います。思いを込めて。(途中からリーザに思いを込めて)君の金髪の髪、バラ色の頬。
「リンゴの花輪を」Von Apfelblüten einen Kranz
グスタフ中尉が隠れて、殿下の歌を聞いている。
リーザがスー・チョン殿下に電報を持ってやって来る。でも、部屋にいたのは隠れていたグスタフ中尉。
何をしているの?そんなところに隠れて。
中国式の誘惑方法を勉強していたのさ。君に結婚を断られたからね。
子供みたいなことを!あなたは素敵よ。でも他の女性を探して。
他の女性を探すなんて難しいよ。僕は結婚したいんだ。
私に探せってこと?
いいね、君が探してくれよ。僕は要求が多いぞ。もし結婚が無理なら、金庫に閉じこもってやる。花嫁を探す広告を出すんだ。だって我慢出来ないんだから。
探してあげるわよ。でも、完璧な人なんていないわ。
グスタフ中尉と入れ替わりに、スー・チョン殿下が入ってくる。リーザは殿下に電報を渡す。
叔父からの電報だ。国の首相に任命すると。すぐに帰国しなければ。
皆が殿下を祝福する中、リーザは皆に去るように行って、スー・チョン殿下と二人で話す。
もう明日にはあなたにお会いできないなんて。中国の恋の歌が忘れられないの。でも、あなたは別の世界の方。
そう。私は君たちの世界にはあわないのです。中国に帰り二度と戻らないでしょう。ここには幸せがありましたが…最愛の人を残していくのです。
最愛の人、私のこと!最愛の人と呼んでくれるのなら、どこへでも。
グスタフ中尉は悲しみ、父親の不安を押し切り、リーザとスー・チョン殿下は中国に旅立つ。
微笑みの国、オペレッタ:第2幕のあらすじ
北京のスー・チョン殿下の宮殿
スー・チョン殿下が、首相になる任命式。その場にリーザはいない。最高の位の者が身につけることを許される「黄色の衣」をスー・チョンが身につける。皆(男性のみ)の祝福。
任命式の後、スー・チョン殿下は、テニスウェア姿の妹のミーに祝福される。その場に伯父が現れてミーに苦言を。
伯父
はしたない格好をするな、ミー。中国の女性ともあろう者が。このような日にくだらないテニスなどするとは。
女は祝典に出られないならいいじゃない。何が悪いの?
ミー。伯父様の言う通りにするのだ。
ミーが着替えるためにその場を離れ、リーザが現れる。
愛する私の夫。誇らしいわ。祝典に出席できたらよかったのに。中国の生活は息苦しいわ。かわいいミーはグスタフ中尉にお似合いだし、本当の妹みたい。でも、他の家族は…。
君が大変なのはわかっている。でも、私の心の中は君だけだ。
リーザと殿下は愛を語り合い、立ち去る。中国の服に着替えたミーが戻ってくるが、誰もいない。
伯父様にこの姿を見せてやろうと思ったのに、いないわ。大体考え方が古すぎる。私たち女性にだって感情があるのよ。古い慣習なんて、くだらないわ。
上級宦官が現れる。
宦官
私は最後の宦官。殿下のように4人の妻を娶れる人生は最高だろうな。だが、私だって人生を楽しんでいるぞ。
そこに、グスタフ中尉が訪問。
変な家だ。誰もいない。あそこに人が。
宦官とグスタフ中尉の会話。
宦官
今日はめでたい日なんだ。殿下が4人の女性と結婚するからな。
なんだって。4人一度に?でも、すでに結婚している奥様(リーザ)は大丈夫なのですか?
宦官
ああ。オーストリアの奥様のことかい?彼女は何も知らないよ。
宦官が去り、ミーが入れ替わりに。グスタフ中尉はミーを殿下と結婚する4人のうちのひとりだと思い、声を掛ける。
お嬢さん。なんてかわいい。恋に落ちそうだ。
ヨーロッパの軍人が愛を語るのは信用ならないわ。お姉様(リーザ)が言っていたもの。
グスタフ中尉とミーは話しているうちに、お互いに親しみがわく。ミーが屋敷を案内するというので、二人は出て行く。
スー・チョン殿下と叔父が言い合いをしている。
伯父
伝統に則り、中国人の4人の女性と結婚するように!
…伝統に従いましょう。
伯父の説得に折れて、殿下は4人と結婚することを選ぶ。ひとり苦しむ殿下。
私の心のすべては、あなたのものです!あなたがいないところで
私は存在することが出来ないのです。
「君は我が心のすべて」Dein ist mein ganzes Herz
「君は我が心のすべて」Dein ist mein ganzes Herz|微笑みの国
グスタフ中尉とミーは仲良くなっていた。グスタフ中尉はミーが殿下の妹だと知り驚く。ミーにリーザに会えるように頼む。リーザとグスタフ中尉の再会。
どうして中国に?皆は元気?
君がいなくて寂しくてね。中国に派遣を希望して来たんだ。君は幸せ?中国の風習には慣れたかい?そうだ。気になることが。殿下が4人の妻と結婚すると聞いたのだけれど。
何を言っているの?彼はそんなことはしないわ。4人と結婚なんて。
スー・チョン殿下が通りかかり、リーザはグスタフ中尉の話を確かめる。
君たちには奇妙なことだろうが、決まりに従う。だが、二人の生活には関係のないことだ。今日、4人と結婚する。
殿下はそう言って立ち去る。
…帰るわ。
わかった。すぐに帰れるように準備しよう。
グスタフ中尉は、すぐに帰国できるように準備を整えるために出て行く。一人残ったリーザは嘆く。
もう終わりよ。故郷に帰りたい。静かな庭に。懐かしい我が家に。
華々しく結婚式が行われる。その後、リーザと殿下はふたりで話し合う。
リーザ。仕方がなかった。あの結婚は無意味なんだ。
私には無意味なことではないわ。出て行きます。
出て行くことを禁じる。ここでは私が主人だ!私の言葉に従え。孔子が言った、女は自由に行動してはならない。
あなたの正体が見えたわ。甘い言葉をささやいて、偽りのおとぎ話を話していたのね。父や友と離れて、故郷を捨ててきたのに。あなたのためにこの国に来たのに。私の冒険は終わったのよ。
リーザはその場を立ち去る。残された殿下。
悪夢のようだ。何をしてしまったのかわからない。
微笑みの国、オペレッタ:第3幕のあらすじ
北京のスー・チョン殿下の後宮
グスタフ中尉は宦官に賄賂を渡して、後宮に入り込もうとする。話がついて、ふたりは立ち去る。
リーザは後宮に閉じ込められていた。ミーがリーザを訪ねてくる。
お兄様に頼まれたの。どうか仲直りして。結婚はしたけれど、4人の女性とは目もあわせないの。伯父様も怒るくらいよ。
あなたのことは大切に思っているわ。でも、ごめんなさい。私は帰りたいの。
二人が話しているところに、グスタフ中尉が後宮に入ってくる。リーザとミーは驚く。
リーザ。逃げる準備ができたぞ。
お兄様はがっかりするわ。でも、お姉様に協力するわ。
リーザは、帰国するための準備に部屋を出て行く。残った、ミーとグスタフ中尉。
君はかわいいお嬢さんだ。きっと忘れられないよ。
いいえ、忘れるわ。あなたはリーザを愛している。
いいや、きっと思い出す。
二人が話しているところに、リーザが準備を整えて戻ってくる。
これでお別れよ。ミー。ありがとう。
リーザとグスタフ中尉は後宮を秘密の出口から出て行く。ミーがひとり、グスタフ中尉に恋をしていたことを思いふけっていると、二人が戻ってくる。
ダメだ、鍵がかかっていた。出られない。
そんな。
3人は、役人たちに捕まる。その場にスー・チョン殿下が現れて、状況を把握する。
君は出て行くのか。
故郷と同じ太陽が、私を苦しめるの。ウィーンに帰りたい。
…君を自由にしよう。グスタフ中尉。あなたにリーザを託します。彼女を幸せにしてください。
あなたの寛大な心に感謝します。
リーザとスー・チョン殿下は和解して、別れる。殿下とミーは、リーザとグスタフ中尉を見送る。
妹よ。彼らの幸せを願おう。悲しくても微笑むのだ。それが仏陀の教え。彼らに私たちの心の内はわからない。いつも微笑み、心の内はわからない。