【初心者向け】こうもり｜簡単なあらすじと相関図

私は二度「変装」するぞ。一度目はフランス人のルナール侯爵。二度目は弁護士だ。

ロザリンデの元恋人（歌声）
愛しいロザリンデ。僕の小鳩よ。出てきておくれ。何度もキスをしたじゃないか。もう一度、僕のもとに帰っておいで。

「行ってしまった、私の小鳩」Täubchen, das entflattert ist

姉から手紙が届いたわ。「今日、豪邸でパーティーがあるのよ。奥様のドレスをこっそり借りて、あなたも来るといいわ。」ああ、私も行きたい！

ロザリンデの元恋人（歌声）
小鳩よ、出ておいで。

何？鬱陶しいわね。お金を投げて遠くに追い払おう。

ロザリンデの元恋人（歌声）
愛しいロザリンデ。出ておいで。

（ロザリンデって奥様のことじゃない。）

（家の外に向かって）私はアデーレ。うるさいからいなくなってちょうだい！

（ああ、あの歌声は彼だわ。結婚前に付き合っていたテノール歌手。夫の家の前でよく歌えるわね。私の立場を危うくするつもりなのかしら。）

（奥様だわ。演技をして、暇をもらわないと！）奥様、私のおば様が病気なんです。

（彼は私を不実な女と思っているかも。でも私は結婚したのよ。彼は4年前に突然姿を消したのに、なぜ今頃ここに来たの？）

奥様！！私のおば様が病気なんです！！お見舞いのために、お暇をください！！

え？誰が病気なの？でもダメよ。今日から私の夫が5日間刑務所に入るのよ。準備があるから、暇なんて出せないわよ。

奥様。そもそもなんで旦那様は刑務所に入るんですか？

夫が役人をムチで叩いて罵ったからよ。

ああ、おば様、あなたに会いにいけないわ。最愛の姪に会えないのよ。

「二重唱」Ach, ich darf nicht hin zu dir

今日はダメよ。

優しい姪をもって、おば様は幸せね。でも、あなたなしでは困るのよ。夫が刑務所に入るというのに。

あなた！なぜここに！

ロザリンデの元恋人
なぜ僕の腕に飛び込んでこないの？

私は結婚しているの。帰ってちょうだい。

ロザリンデの元恋人
結婚？僕は気にしないよ。それに旦那はこれから刑務所に入るんだろう。そうだな。条件付きで帰るよ。旦那が刑務所に入って、君が一人になったら僕を呼んでくれ。

わかったわ。

（彼の歌声には逆らえないわ。魅力的な声だもの。なぜ夫がいなくなるときに、過去の男が出てくるのかしら。なんて試練なの。）

役立たずが、全く弁護にならないんだ。つっかえて話して、説得力がないんだよ。弁護士なのに！！

「三重唱」Nein, mit solchen Advokaten

まぬけな弁護士
あ、あ、あなたが誰にでも怒鳴り散らすからでしょう！に、に、人間味のないひとですよ。

5日間の我慢でしょ。決まったのなら、入るしかないわよ。

5日間のはずが、さらに3日追加された。8日間刑務所に入る羽目になったんだ。馬鹿な弁護士のせいでな！

なんですって！

本当はすぐに刑務所に入らないといけなかったが、妻と最後の食事をしたいと申し出て、帰ってこれたんだ。

あなたにこんな判決を下すなんて、ひどい人たちね。

おばが病気で悲しくて。

さっき、君のおばさんが出歩いているのを見たけど。

（しまった。）

あなたのおば様、本当に病気なの？

アデーレ。お店で一番いい食べ物を注文して買ってきてくれ。戻ったら、タンスの中から一番ボロでみすぼらしい服を出しておいてくれ。刑務所で、物乞いにねだられないようにボロでいかないと。

奥様。いつもお美しいですな。暴君から解放されておめでとう。アイゼンシュタイン。3日追加されるとはすごいな。裁判所に感謝だ。

悪い冗談はやめてください。夫を励まさないと。

言わせておけよ。地下室に酒があるだろう。こいつの毒舌を止めるために、酒を持ってきてくれ。

お前を豪華なパーティーに誘おうと思ってやってきたんだ。

何を言っているんだ。これから刑務所に入るんだぞ。

明日の朝、刑務所に行けばいいじゃないか。パーティーの主催者はお金持ちのロシア人、オルロフスキー公爵だ。オペラ歌手に、バレリーナ、ダンサーと綺麗なお嬢さん方がそろってるんだぞ。これを逃すのか。

そういえば、3年前に仮面舞踏会で、おまえがこうもりで、俺が蝶々に変装して参加したことがあったよな。あれは楽しかった。

蝶々にとっては楽しかったかも知れないが、こうもりもそうだったとは限らない。

ナンパの小道具に使っている「懐中時計」だな。懐中時計をプレゼントすると言って、結局あげないんだろ。

ああ、女にあげたことはないよ。女の気を引くのに丁度いいんだ。

一緒に行こう。豪華なパーティーで女と遊ぶんだ。君をフランス人として紹介しよう。ルナール侯爵としてね。

「二重唱・夜会へ行こう」Komm mit mir zum Souper

行きたいけど、まずいんじゃないか。やっぱりパーティーに行くか！！刑務所に行くんだ、気晴らしをしないと。

あなたがたは何をやっていたの？

刑務所に入る彼を励ましていたんですよ。それで、奥様は何を持っているのですか？

夫が刑務所で着る服ですよ。古い服を用意しろ、と言ったので。

この服では、泥棒に見えてしまうじゃないか。

その服では、刑務所長に軽く扱われますよ。それでは、この辺でおいとまします。

何を着ていったらいいかな。刑務所に入るとしても、身だしなみは大切だよ。クローゼットを見てこよう。

（あの人、何か変ね。それに家に入ろうと待っている元恋人のこともあるし、どうしよう。）

レストランがこれしか作れないと言っていました。

とんでもない料理ね。（とりあえず、元恋人を家に入れて話し合い、それから帰ってもらおう。それにはこの子が邪魔だわ。）アデーレ。おば様が病気なのよね。暇をあげるわ。

髪も燕尾服も完璧だ。体からいい香りが漂うだろう。

囚人のためにこんな服を着るの？食事をしないで行ってしまうの？

食事はいらないよ。おお、丁度いいところに花がある。（豚の口から花をとって服につける）それでは、愛するロザリンデ。お元気で。

ひとりぼっちで過ごすのね。あなたのことを思って過ごすわ。

「三重唱」So muss allein ich bleiben

神様、なんて辛いんだ。でも、行かないと。（早くパーティーに行きたい、でも、刑務所に入る予定だから悲しまないと。）

辛いわ。でも、もう行かないと。（早くパーティーに行きたい、でも、おば様の見舞いに行く予定だから悲しまないと。）

なんであんなに軽薄なんだろう。夫は泣きながら踊っていたわ。

ロザリンデの元恋人
やあ、旦那さんは刑務所入りか。食事まで用意してくれているじゃないか。ナイトガウンを羽織って、旦那さんになりきろう！飲んで歌うんだ。

やめてちょうだい。困るのよ。歌を歌うのはやめて。

ロザリンデの元恋人
なんで？君は僕の歌が好きだったじゃないか。飲もう。愛や永遠なんてものはすぐに消える。ワインで酔って忘れてしまおう。

「愛しいひとよ、飲もう」Trinke Liebchen, trinke schnell

大変。下の階から物音がするわ。誰か入ってくる。

刑務所長
奥様、ご主人を刑務所に連れにきました。下で馬車が待っていますので、すみやかに同行していただけますかな。

ロザリンデの元恋人
僕はアイゼンシュタインじゃないぞ。

刑務所長
アイゼンシュタインではない？自宅で、ナイトガウンを着てくつろいでいるのに？

（小声で）アイゼンシュタインのふりをしてちょうだい。

彼は夫です。仲むつまじくふたりきりなのですから夫に決まっています。そうよね。

ロザリンデの元恋人
（仕方がないな。ご主人の代わりに刑務所行きか。）夫婦なんだから別れのキスをお願いするよ。

刑務所長
私は、今夜豪華なパーティーに行く予定なんですよ。早くして下さい。

人々
パーティーに招かれた私たち。なんて幸せなの。ご馳走にお酒がたくさん。ここは天国そのものよ。

「合唱・夜会が招く」Ein Souper heut uns winkt

なんでも今日のパーティーの催しは、ファルケ博士が準備したそうよ。オルロフスキー公爵とファルケ博士が見当たらないわ。

あなたが手紙を書いて、私を招待してくれたんでしょう？「着飾ってここに来なさい」って。

アデーレの姉
いいえ、そんな手紙は出してないわよ。誰かのいたずら？

いたずらですって？ここに来るのに大変だったのに！なんとか暇をもらって、奥様の衣装部屋に入り込んでドレスをこっそり借りたのよ。まあ、いいわ。楽しみましょう。

アデーレの姉
女中ではまずいわ。あなたは女優ってことに。

私はまだ18歳だが、すでに40歳のよう。すべてやりつくして、退屈なんだ。もう笑うことができない。

私が面白いものをお見せしますよ。題名は「こうもりの復讐」です。大いに笑って下さい。

（アデーレが来たぞ。私の書いた手紙が役に立った。）
（小声）オルロフスキー公爵、こちらの女性が登場人物のひとりです。

（小声）なるほど。

女優です。演技が上手だと褒められます。

すばらしい。女優は好きなんだ。そうだ。ご婦人がた、私の代わりに賭けをしてみませんか。この財布を預けますよ。

（オルロフスキー公爵の退屈が、私を楽しませてくれるのね！）

君の企みを教えてくれよ。

知らない方が楽しめますよ。もうすぐ主人公が来ます。

ファルケ、もう来ていたのか。可愛いお嬢さん方はどこだい？

食事をしているところだよ。みんなそこに集まっている。こちらのお方は、パーティーの主催者だよ。

（小声）オルロフスキー公爵、私にはここに彼の妻を呼び寄せる策がありますので、もっと楽しめますぞ。

え、こちらが？失礼。ロシア人は恰幅のよい方が多いので。

（急に深刻な面持ちで）マデイラ・ワインを一杯飲みませんか？パーティーを楽しんでもらうにはロシアの流儀を知ってもらわないと。

私は客をもてなすのが好き。ただし、それはロシア流。お客が退屈していたら追い出すし、酒を断ったら許さない。さあ、楽しんでくれ。

「私はお客を招くのが好き」Ich lade gern mir Gäste ein (Chacun à son goût)

（大げさだな。）ロシアの流儀に従いますよ。うまい酒ですね。

そうかい。僕は美味しくないよ。だが、今日は「君が」楽しませてくれると聞いている。実に楽しみだ。

え？何か私におかしな所でもあるかな？

オルロフスキー公爵、賭けに負けて財布が空になってしまいました。（あら、旦那様。刑務所にいるはずなのに。ええい、こうなったら度胸を見せてやる。）

（うちの女中だ。しかも妻のドレスを着ている。）君はずっと女優をしているのですか？何しろ我が家の女中にそっくりなので。

失礼な。あなたこそ、ずっとルナール侯爵なのですか？

皆様、聞いて下さい。ルナール侯爵が私を女中だと言うのですよ。本当に失礼しちゃうわ。

侯爵様、もっとよくご覧になることね。美しい手に足、言葉遣いの女中がいまして？間違いを認めて下さいね。

「私の侯爵様」Mein Herr Marquis

（みんなに笑いものにされている。恥ずかしい。）とんだ勘違いでした。許して下さい。

許しましょう。

（小声）オルロフスキー公爵。今来た彼は、刑務所長ですぞ。本人は、フランス人の騎士に変装しているつもりですよ。

刑務所長（フランスの騎士のふり）
オルロフスキー公爵。パーティーに遅れてすみません。

ルナール侯爵、こちらはフランスから来た騎士ですよ。

それでは、ルナール侯爵と騎士はフランス人同士ですね。

（まずい。フランス語で話されると困る！）同郷の方にオーストリアで再会できるとは。

刑務所長（フランスの騎士のふり）
お目にかかれて光栄です。（片言のフランス語）

こちらこそ、お目にかかれて光栄です。（これ以上無理！！）（小声）ファルケ！助けてくれ。

皆様。ここはオーストリアですし、ドイツ語で話して下さいね。

刑務所長（フランスの騎士のふり）
（小声）ファルケ、この場に招いてくれてありがとう。刑務所長では、こんなパーティーに参加することは出来ないからな。

（小声）ふたりがお互いの素性を知ったら、どうなることやら。

皆様。食事はもう少しお待ち下さい。もうひとりご婦人が到着する予定ですので。

人々
どんなご婦人ですか？

ハンガリーの伯爵夫人なのですが、結婚した旦那さんがやきもち焼きで、夫にばれないように、このようなパーティーには必ず仮面をつけて参加します。

仮面の貴婦人か。これは面白くなりそうだ。それにしても、うちの女中にそっくりなのに。そうだ。彼女をナンパしてみよう。

（まだ疑っているのね。）あら、素敵な時計をお持ちですのね。

これは婦人用の懐中時計ですよ。今日、素敵な芸術家のお嬢さんにプレゼントするかもしれません。

そろそろ私の手紙を受け取ったロザリンデが来るはず。お！来たぞ。

手紙は本当ですの？あなたに言われたとおりに仮面をつけて変装してきましたが、夫はどこに？

庭にいますよ。彼に誘われて私はここに来たのです。

鼻を伸ばして女と腕組みして！あの女は女中のアデーレ！しかもドレスは私のものだわ。病気のおば様は嘘だったのね。

奥様。この場で騒動を起こされるのはやめた方がいいですよ。

わかっています。明日に私の怒りが爆発するわ。

（まあ、刑務所長までいるわ。夫は侯爵になりすましているのね。）

ああ、愉快だ。女遊びは楽しいな。

奥様に知られたら、大事になりますよ。

可哀相な妻は一人で、愛しい夫を夢に見ているはずさ。

（その愛しい夫が、私を笑いものにしている！）

ルナール侯爵、騎士殿。二人で話していないで、美しい貴婦人に挨拶されてはいかが。

ハンガリーの伯爵夫人はぜひ私に任せて下さい。

（なんて力強い目でこちらを見てくるんだ。情熱的なのかな？さあ、この懐中時計で、ハンガリーの伯爵夫人を落としてみよう。）

（これが女を落としてきたと豪語する、あの「懐中時計」ね。）まあ、なんて素敵な懐中時計でしょう。どこで買うことができますの？

（やった、かかったぞ。）ウィーンの万国博覧会で買ったんですよ。ちょっとだけ、仮面を外してくれませんか？

明日になれば、私の顔を見ることが出来ますわよ。（なんとしても、この「懐中時計」を奪い取ってやる。証拠になるわ。）

（上品で素敵な女性だ。彼女と早くいい関係になりたいな。）胸がときめくのは恋の証ですよ。

「時計の二重唱」Dieser Anstand, so manierlich

（刑務所で悲しんでいると思ったら、女遊びをしているなんて。）胸の鼓動をその時計でカウントしてみましょうよ。

1、2、3…

あなた、カウントが下手ね。貸してちょうだい。私が時計を持ってカウントするわ。1、2、3…もういいわ。この時計はお役ご免ね。（時計を自分のものにする。）楽しい時間をありがとう。

いえ、そんな。彼女に時計を捕られてしまった。大事な時計が。

人々
この方が噂のハンガリーの伯爵夫人か。どんなお顔か気になるな。

皆さん、遠慮することなんてないわ。仮面を取ってもらいましょうよ。あなたは本当にハンガリーの伯爵夫人ですか？ハンガリー人ならもっと情熱的なはず。

私のパーティーでは仮面をつけるのは自由です。お気になさらず。

いいえ、私は歌でハンガリー人だと証明しましょう。故郷の調べが、私の心を動かす。ハンガリーを思い出す。

「故郷の調べ」Klänge der Heimat

人々
ファルケ博士。そろそろお楽しみが気になるのですが。「こうもり」の話だそうですね。

「こうもり」の話ですって。私には愉快な出来事でしたが、ファルケ博士は道化の役でしたよ。

3年前の出来事です。私たちは夜の仮面舞踏会に招待されました。私は蝶々、ファルケはこうもりの仮装。

私は彼にいたずらをしてやろうと、ファルケを酔っ払わせて、森の中に置き去りにしました。昼間にやっと目覚めたファルケはコウモリの仮装をしたまま、自宅まで戻る羽目になったのですよ。

しばらくの間、ファルケは「こうもり博士」と皆に呼ばれていました。

人々
それでは、いたずらの仕返しが怖いのでは？

私は気をつけていますのでね。

明日には、どちらがいたずらの勝者になるか、わかるかもな。

さあ、皆さん食事をしましょうよ。葡萄の酒を飲み干そう、みんなで乾杯だ。酒の王様、それがシャンパン。どんな遠い国でも大人気。乾杯！！

「シャンパンの歌」Im Feuerstrom der Reben

兄弟たち、姉妹たちになりましょう。みんなで幸せになるのです。永遠に、いつも今日のように。

「兄弟たち、姉妹たち」Brüderlein und Schwesterlein

1、2、3、4、5、6！大変だ。そろそろ行かないと！

刑務所長（フランスの騎士のふり）
1、2、3、4、5、6！大変だ。帰らないと。あなたもですか。それでは一緒に出て行きましょう。

ロザリンデの元恋人（歌声）
ああ、やさしい僕の小鳩よ。

刑務所長
酒の王様、それがシャンパン。乾杯！！いい気分だ。看守か、何か報告があるかね。

酔っ払いの看守
問題ないです。アイゼンシュタインさんが弁護士を呼んでくれと言っているくらいで。ここは陽気な刑務所ですね。歌声まで聞こえる。

アデーレの姉
ファルケ博士に、フランスの騎士様はこちらにいると聞いて来ました。昨夜はうちの妹に関心がおありでしたようなので。

あなたは私の口にキスをしましたよね。お願いがあるのです。実は私はアイゼンシュタイン氏の女中です。勝手に奥様のドレスを着てあの場に行ったのをアイゼンシュタイン氏は知っています。

なので、騎士様には、アイゼンシュタイン氏への取りなしと、あのドレスを私にくれるようにお願いしたいのです。昨夜のドレスは私が着た方が似合うので。

刑務所長
取りなしだけでなく、ドレスまで欲しいとは望みすぎでは？私には難しいぞ。それに君は女優の才能があるのかい？

才能があるか？ですって。あるに決まっているでしょ。田舎娘を演じるときは、お茶目に、女王様を演じるときは堂々と。何でもできるわよ。

「田舎娘をやるならば」Spiel ich die Unschuld vom Lande

刑務所長
自由奔放な女中だね。（呼び鈴）大変だ。ルナール侯爵が訪問してきたぞ。とりあえず、君たちは13号室に行ってくれ。

騎士殿！捕まったのかい？

刑務所長
なんてこった。私は騎士ではなく、本当はここの刑務所長なんだ。

私もルナール侯爵ではなくて、アイゼンシュタインなんだ。

刑務所長
面白い冗談だ。私は君がアイゼンシュタインでないと証明できるぞ。本人はすでに監房に入っているのだから。

酔っ払いの看守
また訪問客です。顔を隠したご婦人です。面会室に通しておりますが、どうします？

別人が私の家で逮捕されて、刑務所にいるのか？その男は誰だ？

酔っ払いの看守
アイゼンシュタインを連れてくるからここで待っているように。

まぬけな弁護士
何を言っているんだ？アイゼンシュタインならここにいるのに？

いいことを思いついた。お前、洋服を交換しろ。弁護士になりすまして、偽物のアイゼンシュタインを詰問してやろう。

ロザリンデの元恋人
誰もいない。お昼になるし、そろそろ帰りたいんだけど。

ロザリンデの元恋人
ロザリンデ！やっと来てくれたんだね。ロマンチックだ。

ロマンチックなんて言っている場合じゃないのよ。夫が来るのよ。その格好はまずいわ。

ロザリンデの元恋人
そうだな。ナイトガウンはまずい。弁護士を呼んだから、もうすぐ来るはず。相談してみよう。

（浮気女め。この男と浮気していたんだな。全て聞き出してやる。）

どう話したらいいのかしら？すべては偶然でした。

「三重唱」Ich stehe voll Zagen

ロザリンデの元恋人
ふたりで食事をしていたところに、人違いで刑務所に入ることになって。

旦那さんが気の毒ですな。

いいえ、夫は夜通し女遊びをしていたのよ。私は離婚するつもりよ。

裏切り者！俺がアイゼンシュタインだ。

あなただったの？あなたこそ、刑務所に入らずに女遊びをしていたでしょ。証拠はこの「懐中時計」よ。

懐中時計！ハンガリーの女性だったのか。

ロザリンデの元恋人
それでは、あなたがアイゼンシュタイン？それなら、残りの7日間、監房に入ってくれ。

おやまあ、すでに正体は分かってしまったようですね。

（小声）ファルケ博士、いったい何をしたんですか？

ロザリンデの元恋人
やっと、本物のアイゼンシュタインが現れたんだ。本人に監房に入ってもらおう。

私はアイゼンシュタインじゃない。

酔っ払いの看守
13号室に入れたお嬢さんたちが、早く出せってうるさいんです。

刑務所長
忘れていた。彼女たちを連れてきて。

ひどいわ。私たちを監獄に閉じ込めるなんて。

刑務所長
実は、私は刑務所長なんですよ。それで、この方は誰です？

アイゼンシュタイン氏とその奥さんですよ。

違う！私はアイゼンシュタインじゃない。

こうなったら、全員に出てきてもらおうか。

人々
こうもりさん、こうもりさん、許してあげて。可哀相なこの人はすっかり弱っていますから。

「こうもりさん、こうもりさん」O Fledermaus, o Fledermaus

頼むよ、誰か説明してくれ。

これが「こうもりの復讐」だ。君の災難は、全て僕のいたずら。みんな演技をしていたのさ。

そうなのか？それでは、オルロフスキー公爵、アデーレ、あと、妻と一緒にいた男も？そうなんだ。よかった。愛する妻よ。抱きしめよう。

ロザリンデの元恋人
（小声でオルロフスキー公爵に）すべて演技だったわけじゃない。でも、彼が可哀相だから、黙っていよう。

でも、私はどうなるの？

私があなたのパトロンになりましょう！

本当にすまなかった。すべてシャンパンのせいなんだ。

すべての出来事は、シャンパンのせい。でも、シャンパンは、夫の浮気を教えてくれて、反省させたわ。みんなで乾杯よ。酒の王様、それがシャンパン。国中で大人気。乾杯！！

人々
みんなで乾杯だ。酒の王様、それがシャンパン。国中で大人気。乾杯！！