ボーマルシェの書いた「フィガロ三部作」の3作目「罪ある母、もう一人のタルチェフ」
1966年にミヨーによりオペラ化。ロッシーニの「セビリアの理髪師」とモーツァルトの「フィガロの結婚」の登場人物たちが、その後どのような人生を歩んだのか、わかるようになっています。
伯爵 → 愛人の子供を養女に
伯爵夫人 → ケルビーノと不倫で出来た子供を、伯爵の子として育てた
ケルビーノ → 戦死
フィガロ、スザンナ → 伯爵家の使用人のまま
上の登場人物たちに加えて、子供たち、「罪ある母、もう一人のタルチェフ」のタルチェフにあたる人物が出てきて、物語が展開していきます。
ボーマルシェ・フィガロ三部作
タイトル | ボーマルシェの戯曲 初演 | オペラ 初演 |
セビリャの理髪師、あるいは無駄な用心 | 1775年 コメディ・フランセーズ パリ | 1782年 サンクトペテルブルク宮廷劇場 パイジェロ |
アルマヴィーヴァ、あるいは無駄な用心 | 1816年 ローマ アルジェンティーナ劇場 ロッシーニ | |
フィガロの結婚、あるいは、狂乱の一日 | 1784年 コメディ・フランセーズ パリ | 1786年 ウィーン ブルク劇場 モーツァルト |
罪ある母、あるいはもう一人のタルチェフ | 1792年 マレー劇場 パリ | 1966年 ジュネーブ グランテアトル ミヨー |
フランス語で読むならこちらからどうぞ。L’Autre Tartuffe ou la Mère coupable
モリエールの喜劇「タルチェフあるいは、ペテン師」
「罪ある母、もうひとりのタルチェフ」のタルチェフとは、モリエールの喜劇「タルチェフあるいは、ペテン師」から取られています。
「タルチェフあるいは、ペテン師」のあらすじ
タルチェフ(ペテン師)がひとつの家庭に入り込み、家長の主人に気に入られる。
タルチェフが娘との結婚と家の財産を取ろうともくろむが、すべてがばれて、大団円。
ボーマルシェの「罪ある母、もう一人のタルチェフ」も、同じ話の展開。
伯爵家に、悪人が入り込み、家族の不和を起こさせる。
悪人は娘との結婚、財産を狙うが、フィガロにより計画がばれて、家族が和解する。
「罪ある母、あるいはもう一人のタルチェフ」の人物相関図
「罪ある母、もう一人のタルチェフ」の簡単なあらすじ
フィガロの結婚から、20年後。1790年末。フランス革命中。
伯爵夫妻は、スペインからパリに移住。フィガロ夫婦も使用人として一緒に。
夫妻には、二人の男子、養女。
長男…賭け事好きで、身を持ち崩した男。数年前に決闘の末、死亡。
次男…賢く、容姿に恵まれた、好青年。レオン
次男は、シェルバン(ケルビーノ)との間の子。
夫人はそのことを秘密にしているが、伯爵は自分の長期不在のときにできた子なので、「実子ではないのでは?」と疑っている。
レオン(次男)の実父、ケルビーノは、すでに戦死している。
養女…知人夫婦の死亡により、残された娘。フロレスティーヌ
実は、知人夫人と伯爵との間の不義の子。知人夫妻の子供として引き取っているので、誰も伯爵の子供とは知らない。伯爵が、実子と確信のもてないレオンに財産を渡したくなくて、実の娘に財産を渡すため、養女とした。
レオン(次男)とフロレスティーヌ(養女)は、恋仲に。
伯爵家の裏事情を知る男が、財産と結婚を狙う
物語のキーマンになるのが、ベジャース。
「罪ある母、もう一人のタルチェフ」のタルチェフにあたる男。
以前、伯爵の秘書として働いたことがあり、伯爵に気に入られている。伯爵は、ベジャースとフロレスティーヌを結婚させようと考えている。人当たりがよく、夫人やレオンからも、信頼を得ている。
伯爵家族から信頼は厚いものの、ベジャースには暗い思惑あり。
ベジャースは戦場でケルビーノから遺書として、伯爵夫人への手紙を託されていた。伯爵夫人への手紙をこっそり読んだことにより、伯爵家の裏事情を知っている。その秘密を利用して、家族を反目させ、フロレスティーヌとの結婚、伯爵家の財産をいただこうと狙っている。
ベジャースが、計画のためにしたこと
伯爵にレオンの出生の秘密をばらす
…レオンと伯爵夫人を追い出すため
レオンとフロレスティーヌに、血縁関係にあるとうそを吹き込む
…フロレスティーヌと結婚するため
戦死したケルビーノの遺書(手紙)の存在を知っているベジャースは、その手紙の存在を暴く。(伯爵夫人が手紙を隠し持っていた)
「次男が実子がどうか」確信のなかった伯爵が、「実子ではない」事実を知り、夫人に激怒。出生の秘密を知ったレオンと夫人が屋敷を出て行くところ、フィガロにより、ベジャースが裏で家族が疑心暗鬼になるように策略していたことが明らかになる。
フィガロ、スザンナの活躍により、家族が和解
最終的に、伯爵夫妻が、お互いの罪を許しあう。
レオン(伯爵夫人とケルビーノの子)とフロレスティーヌ(伯爵と知人女性の子)
血縁関係にないことがわかり、のちに結ばれる予感。ばらばらになった家族が、新しい絆を結びなおす。