マノン・レスコー 第2幕
第1幕で、デ・グリューとマノンはふたりでパリに逃げます。しばらく慎ましい暮らしをしていましたが、兄のレスコーに見つけられたマノン。貧しい暮らしに耐えられず、デ・グリューに何も言わずに去り、老いた財務大臣との愛人契約を受け入れます。
贅沢な暮らしに満足しつつも、デ・グリューとの暮らしを思い出して「柔らかなレースに包まれても」In quelle trine morbideを歌います。
「柔らかなレースに包まれても」In quelle trine morbide【歌詞と対訳】
In quelle trine morbide …
nell’alcova dorata v’è un silenzio
gelido, mortal, v’è un silenzio,
un freddo che m’agghiaccia!
Ed io che m’ero avvezza
a una carezza
voluttuosa
di labbra ardenti e d’infuocate braccia
or ho tutt’altra cosa!
O mia dimora umile,
tu mi ritorni innanzi
gaia, isolata, bianca
come un sogno gentile
di pace e d’amor!
その柔らかなレースに包まれた
金色のベッドには、静寂がある
冷たく、死のような静寂がある
私を凍えさせる冷たさ!
そして私は(愛撫に)ずっと慣れていた。
愛撫に
官能的な
燃える唇と燃える腕の
今、私は完全に別のものを持っている!
ああ、私の慎ましい家よ
私の前に戻ってきて。
明るくて、ひそやかで、白くて
優しい夢のような
平和と愛の家よ!
【解説】マノンの赤裸々なベッド事情
In quelle trine morbide …nell’alcova dorata
その柔らかなレースに包まれた、黄金のベッド
柔らかなレース付き、金色の天蓋ベッド
silenzio…沈黙、静寂、静けさ
マノンは、自分のベッド事情を赤裸々に歌っています。凍えさせる静寂が財務大臣で、官能的な愛撫がデ・グリュー。
もし、財務大臣が立ち聞きしていたら卒倒しそう。オペラの第1幕でマノンを誘拐しようとした人物なので、気の毒には思わないですが。