「ナブッコ」は旧約聖書を題材としたオペラ(歌劇)で、ヴェルディが初期に大成功を収めた作品です。妻子を亡くしたこと、前作のオペラ・ブッファ「一日だけの王様」の失敗と、失意の中で創作意欲をなくしていた時期に書かれました。当初乗り気でなかったものの、ヘブライ人による「行け、わが想いよ、黄金の翼に乗って」の詩を見て感銘を受け、一気に作品を仕上げました。ナブッコの初演には、後年ヴェルディの伴侶になったジュゼッピーナ・ストレッポーニが出演しました。ナブッコの見どころは、「合唱・行け、わが想いよ、黄金の翼に乗って」Va’ pensiero, sull’ali dorateです。イタリア人に愛されている国民的な歌です。
ナブッコ、オペラ:人物相関図
ナブッコ、オペラ:登場人物
ナブッコ | バビロニアの王・ナブコドノゾール王 | バリトン |
アビガイッレ | ナブッコと女奴隷の間に生まれた娘 | ソプラノ |
ザッカーリア | ヘブライ人の祭司長 | バス |
イズマエーレ | エルサレム王の甥 | テノール |
フェネーナ | ナブッコと正妻の娘 | ソプラノ |
大司教 | ベルの大司教 | バス |
- 原題:Nabucco
- 言語:イタリア語
- 作曲:ジュゼッペ・ヴェルディ
- 台本:テミストークレ・ソレーラ
- 原作:「旧約聖書」エレミア書、ダニエル書、エズラ書
- 初演:1842年3月9日 ミラノ スカラ座
- 上演時間:2時間15分(第1幕40分 第2幕30分 第3幕30分 第4幕35分)
ナブッコ、オペラ:簡単なあらすじ
バビロニアの王、ナブッコには二人の娘がいた。長女のアビガイッレはナブッコと女奴隷との間に生まれたが、彼女はそのことを知らなかった。次女のフェネーナは、エルサレム王の甥であるイズマエーレと恋仲であった。
ナブッコは次女に王位を譲ることを決意する。アビガイッレは自分の出生の秘密を知り、王位継承に向けて動き出す。ナブッコは神々の怒りに触れ、雷に打たれ、正気を失ってしまう。
アビガイッレは一時的にバビロニア王国の女王となる。ナブッコはユダヤの神々に改宗し、正気を取り戻す。アビガイッレは神々の力によって精神が不安定になり、毒を飲んで死んでしまう。
ナブッコ、オペラ:序曲
ヴェルディのオペラは前奏曲を取り入れていますが、初期の頃は「序曲」を作っていました。ヴェルディの序曲で特に有名なのは、オペラ「運命の力」の序曲です。
ナブッコ、オペラ:第1幕のあらすじ
エルサレム・ソロモンの神殿
紀元前6世紀、ソロモンの神殿の内部。ヘブライ人、レビ人、娘たちがバビロニア軍の侵攻におびえている。
全員
祝祭の聖具は落ちて壊れるがいい。ユダの人々は喪に服している。アッシリア王はすでに我々に襲い掛かった。
「合唱」Gli arredi festivi giù cadano infranti
レビ人たち
乙女たちよ、ヴェールを脱ぎたまえ。腕を上げて祈ろう。猛烈な敵の怒りが鎮まるように。
娘たち
風の翼に乗って飛んでいく偉大な神よ。あなたが送り出す震える雲から雷が落ちて、アッシリアの軍勢を分散させ、破壊したまえ。
おびえて神に祈る人々のもとに、ヘブライ人の祭司長ザッカーリアが現れる。人質フェネーナを連れている。
希望を持つのだ。(フェネーナを指差し)敵の王の子が、我々に平和をもたらすだろう。
全員
幸せの太陽が私たちにまた昇るかもしれない。
恐怖心を押さえるのだ。エジプトの海岸で、神はモーセに命を与えた。ギデオンの百人の軍勢は、征服されることはなかった。極限状態で、神を信じて死んだ者がいただろうか。
「エジプトの海辺で」D’Egitto là sui lidi
エルサレム王の甥イズマエーレが、神殿に駆け込んでくる。
イズマエーレ(エルサレム王の甥)
アッシリアの王が攻めてきた。
神は敵の大胆さを終わらせるだろう。この女性をお前を信頼して託そう。
イズマエーレにフェネーナを渡す。
太陽が輝く夜のように、風に舞う塵のように、お前は大いなる試練の中で消えていく。偽りのベル神よ。
アブラハムの力ある神よ、私たちとともに戦うために降りてきてください。あなたのしもべに息を吹きかけ、よそ者に死をもたらせ。
「陽の光の前の夜のように」Come notte a sol fulgente
ベル神(バアル)…カナン地域で崇められた、嵐と慈雨の神
全員が去り、イズマエーレと人質フェネーナが残る。
イズマエーレ(エルサレム王の甥)
哀れな女よ、今、私の目の中であなたはより美しく輝いている。嫉妬深く残酷な姉から逃れて、愛のために私のもとに来てくれた。
「哀れな女よ」Misera!
フェネーナ(ナブッコの娘)
ですが、今私は奴隷なのです。
イズマエーレ(エルサレム王の甥)
あなたを自由にするために道を開きたい。
フェネーナ(ナブッコの娘)
あなたは神聖な義務を破ろうとしている。
イズマエーレ(エルサレム王の甥)
来てください。あなたも私のためにそれを破っているのです。私の胸はあなたに幾千の道を開きます。
イズマエーレが秘密の扉を開けようとすると、剣を手にしたアビガイッレが入ってきて、その後にバビロニア人の戦士たちが続く。
神殿は占拠した!!
イズマエーレとフェネーナ
アビガイッレ!!
(二人を見て苦笑いしながら)勇敢な戦士、あなたは愛の武器しか知らないのですか?
(フェネーナに)あなたに不敬の炎があるなんてね。
(ふたりに)あなたたちをどのような神様が救うのかしら?私の復讐の稲妻が落ちるでしょう。
(イズマエーレの手をとり)あなたを愛していました。私の国と心を捧げるつもりでした。あなたが私を愛するなら、今からでもあなたの民を救うことができますよ。
「あなたを愛していました」Io t’amava!
イズマエーレ(エルサレム王の甥)
命を捧げることはできます。ですが、心は許しません。自分の運命には満足しています。ただ、民のために私の涙があなたに語りかけるでしょう。
フェネーナ(ナブッコの娘)
イスラエルの真の神よ、私はすでにあなたを呼び出し、あなたの声を聞いています。私の祈りがあなたを動かしますように。
ヘブライの男女。レビ人、武装をやめた兵士たちが神殿に入ってくる。
ヘブライ人の女たち
彼(ナブッコ)を見たか?群衆をかき分ける姿を。
老いたヘブライ人
血まみれの武器を手にやってくる。
女、レビ人、老人
この日より前に死ねた者は幸せだ。
ヘブライの兵士たち
見よ、(敵の)王(ナブッコ)は馬に乗って神殿に向かっている。黒い旋風のようにいたるところを廃墟にしながら。
慌ててザッカーリアが来る。
敵のナブッコは、なんと大胆な男だ。
武装した兵士たちとともに、アビガイッレが喜びの声を上げる。
万歳、ナブッコ!
「万歳ナブッコ!」Viva Nabucco!
(イズマエーレに)誰がこの邪悪な者を通したのだ?
イズマエーレ(エルサレム王の甥)
(変装したバビロニアの兵士を指差して)ニセの服装です。
敵に攻め入るためには変装だってするわ。誇りなどくだらない。さあ、王ナブッコは進んできているぞ。
バビロニアの兵士たちが神殿に乱入。ナブッコは馬に乗って神殿の入り口に現れる。
(ナブッコに)何をしている?ここは神の部屋だ。
何を言っているんだ。
(フェネーナに短剣を突き付けて)お前が神殿を汚す前に、娘はこの短剣で死ぬだろう。
ナブッコは馬から降りる。
(より強く私の怒りが爆発するだろう。)
フェネーナ(ナブッコの娘)
父よ、心に慈しみをもってください。不幸な人たちに恩赦を。
(新しい希望が輝く。私と争う唯一の女が復讐のいけにえになるかも。)
負け犬どもよ、頭を下げろ。私は勝利者だ。私はよく神を戦場に呼んだ。しかし、おまえの神は来たのか?おまえたちの神は私を恐れている。愚か者には、なにもできないだろう。
(フェネーナに短剣を突き付けて)いけにえだ。お前は血に飢えているのか?ならば、お前の娘の胸の血を!
イズマエーレがザッカーリアから短剣を取り上げる。フェネーナがナブッコのもとに行く。
イズマエーレ(エルサレム王の甥)
(フェネーナに)愛があなたを救う。
私の怒りは、もはや拘束されない。打ち負かされた者を非道に破壊しよう。略奪して、神殿を燃やせ。哀れみは罪だ。
「無分別な者は私の怒りを恐れよ」Tremin gl’insani del mio furore!
呪われた民は、この世からいなくなるだろう。でも、私に争いを仕掛けてくる愛は、このまま消えてしまうのか。
イズマエーレとフェネーナ
哀しいほどの熱烈な愛情が、あなたの瞳にヴェールをかけてしまった。あなたを燃やした愛は恥で私を覆うだろう。
人々から拒絶されるだろう。ナブッコは恐怖の名前となり、あらゆる時代の醜態になるだろう。
略奪だ。
ナブッコ、オペラ:第2幕のあらすじ
第1場
バビロンの王宮・一室
アビガイッレが紙を手にもっている。
よくぞお前を見つけることができた。運命の書よ。王が隠していたのは、私に不名誉を与えるためだったのね。私は奴隷の子。
いいわ、アッシリアの人は私をナブッコの娘だと信じている。なぜ私はここにいるの?奴隷より悪いわ。王はフェネーナに王位を託している。
私の怒りを見るでしょう。フェネーナ、偽りの父、王国を陥れたい。私自身を破滅させたい。致命的な怒りよ。
かつては喜びに心を開いていた。周りの人が話す、聖なる愛を聞いていた。他人の涙に泣き、人の悲しみを受け止めた。あの失われた感覚を誰が取り戻してくれるの?
「かつては喜びに心を開いた」Anch’io dischiuso un giorno
アビガイッレにベルの大司教が近づいて話しかける。
ベルの大司教
恐ろしい光景が私の目に映っています。フェネーナは神を冒涜している。ユダヤ人を開放し…。呪われた暴徒を誰が抑えることができようか。力があなたを待っています。
「恐ろしい光景が」Orrenda scena
(期待を込めて)どうやって?
ベルの大司教
すべては準備できています。すでに噂を広めています。王がいかにして戦争で倒れたかを…。人々は女王を呼ぶのです。アッシリアの地を守るために。一歩踏み出せば、運命はあなたのものだ。勇気を持って!
一緒に行きましょう。今や私は黄金の王位に座っている。血にまみれた王座に。私の復讐はよく知られることになるだろう。王室の娘たちが私のもとに来る。物乞いする謙虚な奴隷として。
「今や私は黄金の王位」Salgo già del trono aurato
第2場
王宮の広間
夜。ザッカーリアと法典を持ったレビ人が広間を歩いている。
来たれ、レビ人よ。聖なる法典を持って。神は私に奉仕することを望んでいる。イスラエルの栄光のために、異教徒の闇を切り裂くのだ。
預言者の口を稲妻で打たれた、至高の神よ。強い口調でアッシリアに、私の口を通して語ってください。
「来たれ、レビ人」Vieni, o Levita
レビ人(レビ族)…イスラエルの部族のひとつで、祭祀や儀式を司る一族
ザッカーリアとレビ人が、フェネーナの部屋に入る。
レビ人たち
何の用だ? 誰が私たちを呼ぶのか。
イズマエーレ(エルサレム王の甥)
兄弟よ、祭司長(ザッカーリア)の望みです。
レビ人たち
神に呪われた者よ。呪われた者には兄弟はいない。お前に話しかける者はいない。あらゆる厳しい嘆きの声が風に乗り、お前の耳に運んでいく。
イズマエーレ(エルサレム王の甥)
生ける神の愛のために、やめてほしい。
ザッカーリアの姉
兄弟よ、許してくれ。彼は「ヘブライ人」を救ったのです。
真実だ。
フェネーナ(ナブッコの娘)
なんの騒ぎですか?
ザッカーリア、イズマエーレ、レビ人たち
ああ、神よ。なんてことだ。
話の流れは唐突ですが、台本通りです。
バビロニアの老大臣アブダッロが慌てて部屋に入る。
バビロニアの老大臣(アブダッロ)
王家の女性(フェネーナ)よ。お逃げを。不吉な叫びが王(ナブッコ)の死を告げている。人々はアビガイッレを求め、(バビロニア・ベル神への信仰を捨てた)あなたを非難している。
フェネーナ(ナブッコの娘)
私はここにいてはいけない。不敬な反逆者の中に行かなくては。
ザッカーリア、イズマエーレ、レビたち、アブダッロ
おやめください。
アビガイッレとベルの大司教、民衆が部屋に乗り込んでくる。
ベルの大司教
アビガイッレに栄光を。
王冠を渡せ。
フェネーナ(ナブッコの娘)
その前に死にます。
ナブッコが群衆をかき分けて、アビガイッレとフェネーナの間に入る。フェネーナの王冠を取り自分で被り、アビガイッレに叫ぶ。
私の頭から取るがいい。
全員
致命的な怒りの瞬間が近づいている。沈黙するすべての顔に恐怖はすでに降り注いでいる。
聞くのだ!バビロニア人。お前の神を地に落としてやる。愚かなヘブライ人。お前の神も倒された。神は唯一の存在であり、私が神だ。
「唯一の神は、私だ」Non son più re, son dio
非常識な。神はお前の髪をつかみ、王座はすでに奪われている。
その老人を連れていけ。お前の仲間と一緒に死ぬがいい。
フェネーナ(ナブッコの娘)
ヘブライ人の彼らとともに、死にます。私はヘブライ人です。
嘘だ。ひれ伏せろ。私は王ではない、神だ。
ナブッコ、稲妻に打たれる。混乱の後には、深い沈黙。
全員
神が不遜な者を打ちのめした。
誰が私の髪をつかむのか?娘よ、弱った私を助けてくれないのか。
天が罰した。
アビガイッレは、ナブッコの頭から落ちた王冠を拾う。
けれど、ベルの人々の栄光が消えることはない。
ナブッコ、オペラ:第3幕のあらすじ
第1場
バビロンの空中庭園
アビガイッレが王座に座っている。民衆がひざまずく。
人々
アッシリアの女王は、ベル神に匹敵する力を持っている。異国の者が戦争に彼女を呼ぶなら、あらゆる場所を破壊をもたらすだろう。
「合唱・アッシリアの女王は」È l’Assiria una regina
ベルの大司教
崇高な女性、アッシリアの運命を握る人。祈ってください。不敬なヘブライ人がすべて滅びるように。まずは、あの女(フェネーナ)を。あなたの妹とは呼べない女を。フェネーナはベル神を裏切った。
「至高の女性」Eccelsa donna
ベルの大司教は、フェネーナとヘブライ人の処刑執行状を渡す。
私に何を求めるの?
正気を失ったナブッコが連れてこられる。バビロニアの老大臣アブダッロがナブッコを支えている。
誰が彼を連れてきたの?部屋に戻しなさい。
(自分を見失った様子で)ナブッコの前で話す不届き者は誰だ?ここは評議会室だ。皆が私を待っている。私を離せ、弱っているが歩けるぞ。
王座に座ろうとして、アビガイッレに気が付く。
彼女は誰だ?なんと大胆な。
席を外してくれ。私に忠実な者たちよ。
民衆や役人が去り、ナブッコとアビガイッレが残る。
女よ、お前は誰だ?
「二重唱」Donna, chi sei?
あなたの後見人として、王座に座っていました。
お前が、私の席に?詐欺だ。
あなたは病で横たわっていた。民は、ヘブライ人の盗人に悲鳴を上げています。この文書に、王家の紋章を入れてください。悪しきものに死が訪れるように。
気がかりなことが。
拒まれるのですか?幸運なヘブライ人。お前たちの神を褒めたたえよ。もはやナブッコはいないのだ。
嘘だ!死をすべてのヘブライ人に与えよ。
彼はフェネーナとヘブライ人の処刑執行状に署名をして、アビガイッレに渡す。
幸せな運命だ。最後の一歩を踏み出した。
だが、フェネーナはどうなる?
フェネーナは、偽りの神に身を捧げた。
アビガイッレが処刑執行状を二人の警備兵に渡す。
フェネーナは私の血縁だ。
誰も彼女を救うことはできない。あなたにはもう一人の娘が…
ひれ伏せ、奴隷よ。
愚かな。その言葉を待っていた。奴隷?私が奴隷?
ナブッコが自分の懐から紙を探し始める。
真実を知れ。
アビガイッレは紙を取り出して破り捨てる。
哀れな人よ。こうやって偽りの文書をあなたに返そう。
(白髪の上にどれほどの屈辱が。もはや私は王の影だ。)
(失った父よりも王座のほうが価値がある。)
トランペットの音が響く。
あなたが命じたヘブライ人を処刑するための死の音です。
警備兵よ、来てくれ。私は裏切られた。
愚か者め、まだ戦うというのか。この警備兵はお前を囚人として捕らえるために残しておいた者だ。
愚かな父親を許してくれ。私の娘を返してくれ。
出ていけ。お前が私に平和を求めても無駄なのだ。この奴隷の娘に王家のマントが似合うかどうかわかるだろう。
第2場
ユーフラテス川のほとり
鎖につながれ、強制的に働かされるヘブライ人。
ヘブライ人ら
わが思いよ、金色の翼に乗って行け。美しくも失われた我が祖国よ。思い出は美しく、死んでしまった。黄金の竪琴よ、なぜ黙っているのか。思い出を呼び起こしてくれ、嘆きの音を響かせよ。苦悩に美徳を与える調べを響かせよ。
「合唱・行け、我が想いよ、金色の翼に乗って」Va’ pensiero, sull’ali dorate
「行け、我が想いよ、金色の翼に乗って」Va, pensiero|ナブッコ
泣いているのは誰だ?悩める兄弟よ、立ち上がろう。私の唇から主は語られる。私は暗闇の中の未来を知っている。価値のない鎖が断ち切られるのを知っている。
「泣いているのは誰だ」Oh chi piange?
ヘブライ人ら
あなたにどのような炎が燃えているのか?その唇に、主は語りかける。価値のない鎖は壊される。
ナブッコ、オペラ:第4幕のあらすじ
第1場
王宮の一室
ナブッコは椅子に座らされ、眠っている。喘ぎながら、目覚める。
手足はある。追いかけられるひどい夢だった。
(部屋の外から声)フェネーナ!
娘の名が響いている。娘が手をつながれ、泣いている。
(部屋の外から声)フェネーナに死を!
雷と稲妻。ナブッコの表情が変わる。扉に駆け寄り、閉じ込められていることに叫ぶ。
ユダの神よ、お許しください。祭壇、神殿、あなたにとって聖なるものは元に戻るでしょう。私の祭壇は壊します。私の声を聞いてください。
「ユダの神よ」Dio di Giuda!
バビロニアの老大臣(アブダッロ)
どこに行かれようとしているのですか?
バビロニアの兵士たち
私たちは皆、あなたを守るためにここにいます。
娘のフェネーナを救いたい。
バビロニアの老大臣(アブダッロ) とバビロニアの兵士たち
邪悪な者は倒れるだろう。アッシリアの上に、私たちは太陽の輝きを見る。
勇敢な兵士たちよ、私に続け。アッシリアの王に私は戻る。私の王冠は太陽のもとで輝くだろう。
「勇敢な兵士よ、私に続け」O prodi miei, seguitemi
第2場
バビロンの空中庭園
祭壇の前に、フェネーナとヘブライ人が連れてこられる。
葬送行進曲
フェンネーナ(ナブッコの娘)
天国は開かれました。私の魂は神を慕っている。星の輝きよ、さらば。神の光が私を照らしてくれる。
「天国は開かれました」Oh dischiuso è il firmamento!
(舞台裏から声)万歳ナブッコ。
処刑の儀式が行われる。
ナブッコが庭園に剣を抜いて駆け込んでくる。
不敬な者よ、やめろ。兵士たちよ、致命的な偶像を大地のほこりのように壊してくれ。
「不敬な者よ、やめろ」Empi, fermate!
偶像が自ら粉々になる。
全員
神の奇跡だ。
イスラエルに戻れ。祖国の喜びを取り戻すために。新しい神殿を立ち上げるのだ。不敬な暴君は神をあきれさせたが、悔い改めた王に心の平和を与えた。
神はアビガイッレの心を乱れさせ、邪悪な者が自ら毒を飲むようにさせたのだ。神だけが偉大で、神だけが強い。娘フェネーナよ、土にひれ伏して神を崇めよう。
全員
偉大なエホバ。
「合唱・偉大なエホバ」Immenso Jehovah
アビガイッレが二人の兵士に支えられてくる。
ああ、誰が見えるのか?
全員
惨めな女がなぜここに?
(フェネーナに)死んでいく私に、あなたの許しを与えて。
(イズマエーレに)来てください。
(ナブッコに)彼らは互いに愛し合っている。彼らはあなたに望みを抱いています。ああ、誰が私の鉄のような犯罪の苦しみを取り除いてくれるのかしら?
(ヘブライ人に)私はあなた方の神を崇拝します。私を恨まないでください。
「死んでいく私に」Su me… morente
ヘブライ人
神は救うだろう。
私を呪わないでください。
アビガイッレ、倒れて死ぬ。
全員
倒れた。
(ナブッコに)エホバに仕える者は、王の中の王になるだろう。